王書―古代ペルシャの神話・伝説 (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル王書―古代ペルシャの神話・伝説 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者フェルドウスィー
販売元岩波書店
JANコード9784003278611
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » アジア文学

購入者の感想

フェルドウシーの浩瀚な叙事詩を完訳するのは、たいへんな作業であることは、よく分かりますが、すでに抄訳が何十年も前から出ている以上、やはり重複することなく翻訳して欲しかった。とはいえ、コンパクトにまとめられていて読みやすいのは事実。とりわけ、ハイライトとなる「さわり」の部分が十分に楽しめるよう配慮されているので、神話・伝説の世界に関心のある人には一読をおすすめします。

ナショナル・ジオグラフィック誌の2008年8月号のイラン特集で、アラブでもイスラムでもないペルシャの魂を象徴するものとして、王書(シャー・ナーメ)が紹介されていた。お気に入りのアフガニスタンの小説『カイト・ランナー』でも、シャー・ナーメが言及されていた事を今さらながら思い出し、興味を惹かれて読んでみた次第である。

シャー・ナーメの和訳は、岩波文庫版と東洋文庫版がある。東洋文庫版は実質的には単行本で、しかも韻文形式で訳されていて、何だかとっつきにくい。そこで文庫本で、しかも散文形式の岩波文庫版を読む事にした。

岩波文庫版はとても読みやすくて良いのだが、かなりのダイジェスト版で、読み進むにつれて物足りなさを感じた。たとえば、シャー・ナーメの事実上の主役である英雄ロスタムの、7つの艱難道程がバッサリと省略されているのには、正直ガッカリ。また、ロスタムとソフラーブが父子とは知らずに敵味方に分かれて戦う、シャー・ナーメの最も有名なエピソードも、省略してほしくない箇所が省略されている。シャー・ナーメの各エピソードは長大なので、省略は仕方ないだろう。だが、どこを省くべきか省かぬべきか、訳者と私とではかなり感覚が違っていて、フラストレーションを感じるのだ。

そこで、急遽図書館から東洋文庫版を借りてきて、補足的に読む事にした。東洋文庫版も抄訳だが、岩波文庫版ほど大々的な省略はされていない。最初とっつきにくいと思った韻文形式も、読んでみると日本語がこなれていて、案外読みやすいとわかった。

それでも、東洋文庫版がロスタムの父親ザールの話から始まっているのに対し、岩波文庫版がザール以前の諸王から始まっているのは悪くない。たとえば、ザッハーク王がどれほど悪い奴かを読んでいなければ、ザールとザッハークの子孫であるルーダーベ姫との恋に、なぜ周囲がこれほど猛反対したのか、いまひとつピンと来なかっただろう。

という次第で、何だか変な読み方をしてしまった。人様にはお勧めできないが、自分としてはこれで良かったと思う。

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