なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトルなぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか
発売日販売日未定
製作者ロバート・C・アレン
販売元エヌティティ出版
JANコード9784757123045
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済史

購入者の感想

本書は、表題のとおり、近代国家の成立を歴史的に紐解きながら、豊かな国と貧しい国がなぜ分かれたのか、を分析した本である。

著書独自の新たな視点で述べられており、新鮮である。
すなわち、労働コストが上昇したとき、これを節約するための資本導入による技術開発がなされ、生産性を高めて、経済成長していくというものである。
 その典型が産業革命期のイギリスである。
 本書で紹介されているのは、紡績機をめぐる発明である。これらの機械は、労働コストを節約するために開発された。これを同時期のインドに持っていっても、労働コストのほうが安く、利益は見込めなかったというのである。

そしてもう一つの舞台が新大陸である。アメリカはいち早く先進国の仲間入りを果たしたが、それ以外の中南米諸国は貧しいままである。それはなぜか。
 大きな要因は、先住民の数の違いであるという。先住民のほとんどは低賃金労働を余儀なくされ、これが製造業の発展を大きく阻害した。
 加えて、メキシコとアンデスの銀が皮肉なことにスペインをインフレにし、没落していくきっかけにもなったという。

そして、アフリカである。この地域では、ヤムイモ、油ヤシなどの定住農業が早くから定着していたが、土地が価値を持たないほど豊富であったため、先進農業社会が私有財産を体系づけるために用いた法的、文化的基盤が欠けていたということである。
 今日でも、主要な一次産品である油ヤシやカカオの価格は低いままであり、なかなか生活水準の改善には結び付いてはいない。

後半になり、後発工業国としての日本が登場する。
日本は、インドと違い、西洋の紡績機をそのまま取り入れたのではなく、独自に改良して自国にあった木造の機械で安価な綿糸を輸出し、短期間でイギリスを打ち負かすまでになっていく。

本書を通読して印象深いのは、人口が多いとか、資源があるということは決して豊かさに結びつくものではなく、むしろ創意工夫や知恵といったものこそが、豊かさをもたらすのだと改めて感じる。
 これからの日本の方向を考える上でも大いに参考になる。

良い点は、グローバルヒストリーとして網羅的であること。要点が簡潔に書かれていること。オリジナルな図表が多いこと。
なぜ、イギリスで産業革命が起きたのか、という問いに対する答えは、「賃金が高くて、石炭が安かったから」と明快。しかし、残念なことに、なぜイギリスで労働者の賃金が高かったのかの説明がない。(p.40〜41)フランス、オーストリアと比較したグラフが描かれていて、17世紀半ばに逆転してイギリスの相対賃金が高くなったことが示されているのだけれども、その理由について書かれていない。私の見落としだろうか。
{追記:賃金が高かった、ということをではなく、石炭が安かった、ということを強調したかっただけかもしれない。だとしたら、平凡な結論だけれども、真理はあるいはそのあたりなのかもしれない。}
19世紀の発展戦略は、鉄道・関税・銀行・教育。わかりやすい。
訳文はおおむね読みやすいのだけれども、「経済発展のための目的は、農民の支配にもう一つの側面を追加している」(p.153)というような文章の理解には数秒ぐらいを要してしまい、いらいらする。このような入門書であれば、直訳的な正確さよりも意訳になっても読みやすい訳のほうがよいのではないだろうか。「農民に対する支配には、経済発展というもう一つの目的があった」という意味だと思う。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか

アマゾンで購入する
エヌティティ出版から発売されたロバート・C・アレンのなぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか(JAN:9784757123045)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.