医療大転換:日本のプライマリ・ケア革命 (ちくま新書) の感想

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タイトル医療大転換:日本のプライマリ・ケア革命 (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者葛西 龍樹
販売元筑摩書房
JANコード9784480067319
カテゴリジャンル別 » 医学・薬学・看護学・歯科学 » 医学一般 » 病院管理学

購入者の感想

 医療関係者や医療に興味を持つ者であれば,プライマリ・ケアという言葉は聞いたことがあるでしょう.では,プライマリ・ケアに関わる医師,家庭医がどのような仕事をしているのか,正しく知っている人はどれ程いるでしょうか.地域のクリニックや小さい病院にいて,比較的治療が簡単な病気に対応してくれる医師といった認識が一般的でしょう.私自身,本書を読んで,プライマリ・ケアの幅の広さと,医療のあり方を変える可能性について初めて知りました.

 本書によれば,日本はプライマリ・ケア後進国であり,イギリス,オーストラリア,カナダなどが先進国です.これらの国では,内科,小児科,産婦人科,整形外科,精神科などに該当する疾患の患者の8割以上を,家庭医が治療しているのです.これに対し,専門家が診察した方が治療成績が良くなるのではないかと考える方もいるでしょう.ところが意外にも,家庭医と専門医が連携して働くことで,合併症が減少し,平均寿命が延長し,終末期ケアに対する満足度が向上することなどが臨床研究で証明されているのです.この効果の背景には,患者の大半を占めるありふれた疾患に家庭医が対応することで,専門医が高度な医療に集中できることがあるのです.

 また,家庭医の特徴として,患者の生活や家庭の状況などを把握した上で治療を進めることが強調されています.例えば,1人の人間が病気になることで,その家族にも肉体的・精神的に大きな負担がかかりますが,家庭医は家族の精神状態や健康状態にも注意を配り,問題がある場合には対応してくれるのです.

 以上から分かるように,家庭医とは多部門の知識・技術を持ち,全人的な医療を提供できる医師のことを指します.本書を読むことで,救急患者のたらい回し,誤診や医療ミスの放置,無駄な検査や投薬といった日本の医療問題が,家庭医の導入で解決する可能性があると納得できました.

超高齢社会を前に、わが国のプライマリ・ケアが、このまま日本医師会に牛耳られていたら、医療崩壊は目に見えている(既に崩壊している?)ことを理解しました。
これまでの日本における医学教育や医療政策の失策の連鎖が、現在の医療崩壊という惨状を生んでいるという歴史的事情が分かりやすく解説されていて、また、日頃提供されている医療に不満を持っている私にとって、共感できる実例が数多く挙げられていて「うん、うん」と頷きながら読み進めることができました。
日本の医療の救世主となりうる家庭医育成の試みを応援しています。

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