獄中記 (岩波現代文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル獄中記 (岩波現代文庫)
発売日販売日未定
製作者佐藤 優
販売元岩波書店
JANコード9784006031848
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

佐藤は先輩筋に当たる人物なのだが、これまではあの独特の風貌やしゃべり方、知の怪物などと持ち上げられている雰囲気などもあり、正直敬遠していた。だがやはり、人間の本質は窮地に陥った際に現れるもの。本書を読み、改めてその人間的な幅の大きさを感じた。

拘留生活も悪くない、むしろシャバに出たら、拘置所のような部屋を作りたいと所々に述べている。刑務所内での読書と思索生活をそれほど気に入っていたのだろう。ただ、さすがに取り調べはきつかったようで、「いやな感じ」「とにかく頑張ろう」などと、自分を鼓舞する言葉もちらほら垣間見える。

こうした精神状態を支えたのは、それまでの外務省での修羅場経験が大きかったのだろうが、自らの置かれた状況を客観視しつつ、「自らの守りたい価値を守る」という、知識人としての矜持があったのだろう。また、「何事にも時がある。時が満ちて初めて次に進むことができる」との引用があるように、クリスチャンとして学んだ時間感覚もあったのだろう。さらにはヤクザ小説の引用で「刑務所は男を磨く場所」というフレーズが紹介されており、厳しい環境ながらも凛とした姿勢を貫いたことに感嘆する。

分析的な論調がメインとして続く中で、食べ物の話や夢の話などが織り交ざっており、獄中における様々な心情変化の過程が読み取れる。本人も様々に揺れ動いたことだろうが、精神の軸となったのが読書と学習であったということは、不安定な現代を生きるわれわれにとっても大きな示唆になる。「時間があるからといって、関心領域が散漫になることは危険」という意見も参考になる。「面倒な事象を記憶に精確に定着させる」ことが研究であると。まさにその通りであろう。ちなみに、政治がらみの話はあんまり興味がわかない。

多様な読み方ができるテキストはすごく重要――そう著者はいうが、この『獄中記』はまさにその典型。僕はこれをもっぱら「勉強法」のお手本として熟読した。凡百の"how to"ものよりも、はるかに切実な、著者自身の猛勉強の実践報告だ。なにしろ気合の入れ方が違う。獄中での毎日の時間を最大限活用し、1冊1冊の本を1行もおろそかにせず、なんとか自分の肉にしようとする姿勢は、ものすごく刺激的だ。
 たとえば、学術書は3回読む。再読のときは抜粋を作り、内容を再構成した読書ノートも作る。3回目には理解不十分な箇所をチェック。この読み方だと、10年経っても内容を忘れないという。(ちなみに著者の記憶力のよさは折紙つき)
 おっと、これを「なるほど」と読みすごしては、なんにもならない。さっそく僕自身、この『獄中記』を再読して抜粋を作ってみた。巻末付録の「北方領土問題」の解説もすごくわかりやすい。
 さて、抜粋は作ったが、どこまで肉にできることやら。

 単行本で読んだが 文庫になったので再読した。

 前回は佐藤優を初めて読んだ本であったので 正直 驚愕しつつも読み切れていなかった自分に気がついたところだ。前回読んだ後に 佐藤優の本のかなりを読んできたことで 彼と彼のバックボーンに詳しくなった。その上で 本書を読むと自分なりに読み方が深くなったことに気が付き 非常に嬉しいものだ。

 500日を超える留置所で佐藤を支えたのが読書であることが はっきりと浮かび上がってくる。読書には 趣味や楽しみという面も大きいわけだが 本書から浮かび上がる読書とはそのような「気楽」なものではない。まさに 自分の存在を賭けて本に立ち向かう著者の姿には凄味がある。
 本とは 著者との会話である。佐藤は孤独な獄の中で 実に多くの著者と「会話」している。その会話が 彼の背骨となり足腰となって 500日を超える日々を耐えた。かつ 獄を出た後の彼の大活躍も この500日の読書の日々にある。

 本書を再読して 改めて 自分の「読書」を反省している次第だ。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

獄中記 (岩波現代文庫)

アマゾンで購入する
岩波書店から発売された佐藤 優の獄中記 (岩波現代文庫)(JAN:9784006031848)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.