ローマの哲人 セネカの言葉 の感想
参照データ
タイトル | ローマの哲人 セネカの言葉 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 中野 孝次 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784000025850 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学 |
購入者の感想
公立図書館でセネカの再販が目についたので読んでみました。
「人生・幸福・死」などについて、ローマの皇帝ネロが善政を行っていた時の顧問を務めたセネカの思想の概説書です。現代日本の社会問題と上手に結びつけつつ、セネカの置かれていたローマの状況を織り込みながらの著述でとても読みやすいと思います。
子供を失った母への「マルキアへの慰め」など、「泣いて不幸に打ち勝てるものならば、みんなで一緒に泣きましょう」と心を引きつつ、「悲しみは役に立つか」と問いかけ、最期に「無益な悲しみは止めてください」と結ぶ言葉などはみごとです。セネカは自然を重んじ、禁欲を説くストア学派の後期の哲学者なのですが、その思想の概観としても読むことができるでしょう。
物があふれながらも、不況下の不安におののく日本で、人々の心を静かにするために書いた文学者の中野孝次の配慮も心優しさを感じました。
唯一問題を感じたのは、セネカも中野孝次もいわゆる「ヒマ人」、思索によって生きていくことができることです。一日疲労至極に達しなければ衣食住を失い、考える余裕もない人のことはわからないように思いました。そこは人間が置かれた状況でしか思索できないということで、仕方ないことと思います。
その意味で、この著から自分に合う部分を見つけ、我がものにすることはとても意味があり、味わい深いものでした。
「人生・幸福・死」などについて、ローマの皇帝ネロが善政を行っていた時の顧問を務めたセネカの思想の概説書です。現代日本の社会問題と上手に結びつけつつ、セネカの置かれていたローマの状況を織り込みながらの著述でとても読みやすいと思います。
子供を失った母への「マルキアへの慰め」など、「泣いて不幸に打ち勝てるものならば、みんなで一緒に泣きましょう」と心を引きつつ、「悲しみは役に立つか」と問いかけ、最期に「無益な悲しみは止めてください」と結ぶ言葉などはみごとです。セネカは自然を重んじ、禁欲を説くストア学派の後期の哲学者なのですが、その思想の概観としても読むことができるでしょう。
物があふれながらも、不況下の不安におののく日本で、人々の心を静かにするために書いた文学者の中野孝次の配慮も心優しさを感じました。
唯一問題を感じたのは、セネカも中野孝次もいわゆる「ヒマ人」、思索によって生きていくことができることです。一日疲労至極に達しなければ衣食住を失い、考える余裕もない人のことはわからないように思いました。そこは人間が置かれた状況でしか思索できないということで、仕方ないことと思います。
その意味で、この著から自分に合う部分を見つけ、我がものにすることはとても意味があり、味わい深いものでした。