コレラの時代の愛 の感想

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参照データ

タイトルコレラの時代の愛
発売日販売日未定
製作者ガブリエル・ガルシア=マルケス
販売元新潮社
JANコード9784105090142
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » スペイン文学

購入者の感想

ガルシア・マルケスの作品で、一番好きな作品です。
待ち続ける男に、ロマンスを感じます。

永遠に続く恋、とはフランスソワーズ・サガンが「あり得ないと思う。」と言っていましたから。
はたして、現実にあるののでしょうか。

 19世紀末のコロンビア。若き娘フェルミーナ・ダーサは青年フロレンティーノ・アリーサの求愛を受ける。しかし彼女は医師フベナル・ウルビーノと結婚。フロレンティーノは51年9ヶ月と4日もの間、フェルミーナを待ち続けることになる…。

 半世紀以上も一人の女性を思い続ける男の物語ですが、20世紀ないし21世紀の恋愛小説に引き比べると、この小説は1985年に書かれたにも関わらず実に古風で、激しい熱情といったものは主人公たちの間には立ち現れてこないように見えます。彼らの会話も直接話法で書かれることはまれで、切り結ぶような激しい言葉のやりとりはなく、淡々とした事実の描写が続きます。

 この500頁を超える長年月の物語で、私が最も印象的に思ったのは、長きに渡って一人の女性を思い続けたフロレンティーノの恋情よりも、確かに共に日々を積み重ねてきたフェルミーナとフベナルの曲折を経た夫婦愛です。

 フロレンティーノの思いに心が重ならないわけでは決してありません。フィッツジェラルドの「ギャッツビー」のような物語に魅かれる気持ちが私にもあります。

 しかし、フェルミーナとフベナルの夫婦の間に起こる小さな出来事の数々は、他の誰でもない二人が共同で紡いだ記憶のかけらとして確実に残っていきます。

 妻の誕生日に一日家事を引き受けたものの、失敗続きの夫。

 喧嘩の末の家出後、夫が迎えに来てくれて嬉しさのあまり神に感謝する妻。

 「毎日ちょっとした誤解があったり、一瞬相手に憎しみを感じたり、お互いに不潔だと思ったりしたが、二人でそうした局面を乗り切り、ときには夫婦の秘めやかな営みの中で信じたがたい栄光の瞬間を手に入れたこともあった。あの頃、彼らは急ぐこともなければ、度を過ごすこともなく深く愛し合っていた」(326頁)。

 こう綴られる二人の物語は、長い歳月こそが成しえる、じっくりと熟成した愛として、私の胸に深く沈みました。

50年以上もの歳月、一人の女性を待ち続けた男の物語。
一体どんな小説なのだろう?と思い手にとったが
ページをめくるにつれてあまりにも独創的な物語の広がり方、
予想のつかなさ、つかみどころの無さに最初は戸惑った。

しかし読み進めていくうちに、次々に現れる描写の濃厚さや緻密さに夢中になった。
ただただ物語の世界に身をまかせて読み進めていくことで、
目の前を見たこともない不思議で美しい景色がどんどん通り過ぎていくような
そんな感覚になっていった。

物語は真っ直ぐには展開せず、男の人生と女の人生を交錯させながら
ゆきつ戻りつ、ときにまったく別のものが現われて話は飛んでまた戻る。
そうやって500頁にもわたって、50年以上の時間が語られていく。
舞台はコレラが猛威をふるっていた19世紀末のコロンビア、ということだけれど
幻想的な描写は、もはやどこの時代のどこの国でもない場所に思えてくる。

読んでいる途中は「長い」と感じたりもしたのに
読み終わった後にはなぜか「また読み返したい」と感じていた。不思議な小説だった。

一組の夫婦と、その妻をずっと想い続ける一人の男の話。
ラブスト―リーであることには間違いないのだが、
これが他の作品と一線を画すのはそこに「老い」があること。
愛という大きな物語が時間とともに流れゆき、老い、時折、コレラの流行、戦争などの大事件が飛び込んでくる。

とても長いスパンで愛を描いている。
狂おしいほどの恋愛から、石鹸がないということで大喧嘩をしてしまう夫婦生活、
まるで空気のような存在になる晩年期、そして死別。
夫婦のだいたいがここにある。
(と書いたが私は結婚してまだ5年だか、夫婦のだいたいがあるような気がする)

「何年も暮らしていくうちに、二人は様々な形で、結局はこんな風にして暮らしていくしかないし、
 こんな風にして愛し合うしかないのだという至極もっともな結論に達した。この世界で愛ほど難しいものはなかった。」

「二人は互いに相手なしでは、というか相手のことを考えないでは片時も生きてはいけないようになっていた。
 しかし、老いが進むにつれて、彼らは徐々にそのことを意識しなくなった。
 互いに相手にもたれかかるようにして生きていた。
 それが愛情によるものか、単にそうするのが楽なだけのことなのかわからなくなっていた。
 胸に手を当てて考えたことなどなかった。というのも以前からそうしたことを考えないようにしていたからだった。」

とか言われると夫婦がわかったような気になるでしょ。

さて、例の代表作との比較。
『百年の孤独』で打ちのめされたガルシア・マルケス・ファンはこれを読むと、あれ?ちょっと違うかなと思うだろう。
私もあのインディオの語り部のような圧倒的な物語の力を期待したのだが、この作品は落ち着いている。
文体も物語と同じように「老いた」というべきか。粗削りな所はなくなり、洗練されているが、それはそれでいい。

さらにあとがきで物語についてのすばらしい考察がある。以下引用。

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