ティファニーで朝食を (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルティファニーで朝食を (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者トルーマン カポーティ
販売元新潮社
JANコード9784102095089
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

カポーティの短編の巧みさと独特の雰囲気に目を見張った僕は、改めて「ティファニー」をオリジナルテキストと共に読み返してみよう、と思っていた矢先に、本書が出版された。
さっそく買ってきて、1968年にやはり新潮社から出版された龍口直太郎訳「ティファニー」と読み比べてみた。
龍口訳も本書も、表題作以外に全く同じ短編が3作収められている。「花盛りの家」「ダイアモンドのギター」「クリスマスの思い出」である。
これらを読み比べて改めて感じたのは、村上さんがかねがねおっしゃっている「翻訳の賞味期限」ということ。
原作が名著と呼ばれるものであればオリジナルテキストに賞味期限はないが、翻訳の方はそれが訳された時代々々の社会を反映したコトバで訳されているためか、そこにどうしても賞味期限といったものが生じると。
本書と龍口訳を読み比べて、少なからずそれを感じた。
龍口氏は、1903年生まれ。「戦後日本に米文学を紹介した」とあっていわば「大御所」である。
その龍口訳のある意味古色蒼然たる訳文は、地の文においては格調高くカッコいいのだが会話文においてはなんとも違和感が出てくる。
ホリー・ゴライトリーやその友人のマグなど個性的で(少なくとも表面的には)都会的な若い女性たちが出てくるシーンで「こちとら」だの「やっこさん」だのというコトバが発せられるとねぇ。日活の「渡り鳥シリーズ」じゃないんだから。
その点村上訳の会話は実に現代的でクールである。
また、地の文においても龍口訳では米国の学制に対する認識不足や社会的なスタンスの違いによるとみられる咀嚼の甘い訳などが見られたのに対し、村上訳はそのあたりをスッキリとクリアしている。
このあたりはいずれも龍口氏の力量というのではなく、翻訳当時の日本社会のありよう、もしくは米国社会との距離感によるものだとおもう。
おそらく、いかに「大御所」による名訳とはいっても賞味期限が来つつあるのだろう。

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