唐詩選〈上〉 (岩波文庫) の感想
参照データ
タイトル | 唐詩選〈上〉 (岩波文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 前野 直彬 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784003200919 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 漢詩 |
購入者の感想
中国の明代に編まれた唐詩のアンソロジーの、岩波文庫版全三巻中の第一巻。唐詩選全七巻のうちの第一巻五言古詩、第二巻七言古詩、第三巻五言律詩を収録。
読み始めてすぐ、解題の記述が興味深くてたまらない。「唐詩選」という書名は以前から知っていて、唐の時代の詩をまとめたものだろうという予断を持っていたが、唐詩を推す勢力と宋詩を推す勢力との文学上の論争のうちから編まれた著書であってかなりの偏向があるというのは、思いもよらなかったので面白い。吉川幸次郎氏が「新唐詩選」として唐詩の中の社会性を強調したのは、おおもとの唐詩選が社会性の強い詩を選ばずに、詩の形式性の整い具合を評価基準にしていたことと、内容として孤独の境地に遊ぶ詩が多いことへの不満があったのだな、と上巻全体を読んでいけば納得できる。整った形式と清浄で自得した孤独感は読んでいて心地よく、李白の詩などは特に感じ入るところ多いが、「新唐詩選」正・続編の社会的なまなざしをも想起すればより唐詩への感受性が広がるのだろう。
第一巻から第三巻まで読んでいくといずれも劣らず感じ入ること多い一方で、自分としては七言古詩の感覚が一番読んでいて響いてきた。五言の詩句は堅固でありながらどこか窮屈で、それは当然ながら古詩よりも律詩で著しい。その技巧的高さの粋は何か想像できるが、七言の古詩の持つ奥行きと余情は、辿っていて気持ちが良かった。
日本での受容に荻生徂徠の古文辞学派が関わっていたというのも意外で愉しい。中巻、下巻と楽しみになってくる。
読み始めてすぐ、解題の記述が興味深くてたまらない。「唐詩選」という書名は以前から知っていて、唐の時代の詩をまとめたものだろうという予断を持っていたが、唐詩を推す勢力と宋詩を推す勢力との文学上の論争のうちから編まれた著書であってかなりの偏向があるというのは、思いもよらなかったので面白い。吉川幸次郎氏が「新唐詩選」として唐詩の中の社会性を強調したのは、おおもとの唐詩選が社会性の強い詩を選ばずに、詩の形式性の整い具合を評価基準にしていたことと、内容として孤独の境地に遊ぶ詩が多いことへの不満があったのだな、と上巻全体を読んでいけば納得できる。整った形式と清浄で自得した孤独感は読んでいて心地よく、李白の詩などは特に感じ入るところ多いが、「新唐詩選」正・続編の社会的なまなざしをも想起すればより唐詩への感受性が広がるのだろう。
第一巻から第三巻まで読んでいくといずれも劣らず感じ入ること多い一方で、自分としては七言古詩の感覚が一番読んでいて響いてきた。五言の詩句は堅固でありながらどこか窮屈で、それは当然ながら古詩よりも律詩で著しい。その技巧的高さの粋は何か想像できるが、七言の古詩の持つ奥行きと余情は、辿っていて気持ちが良かった。
日本での受容に荻生徂徠の古文辞学派が関わっていたというのも意外で愉しい。中巻、下巻と楽しみになってくる。