日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫) の感想
参照データ
タイトル | 日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫) |
発売日 | 2014-02-05 |
製作者 | 竹村 公太郎 |
販売元 | PHP研究所 |
JANコード | 9784569761459 |
カテゴリ | 歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般 |
購入者の感想
著者・竹村公太郎氏の「日本史の謎は地形で解ける(文明文化篇)」
に魅了されてしまった。
日本の歴史人物を役者として、日本の独特な地形・インフラを舞台
装置と見立て、独自な見識と見解を展開しているのである。
本書は歴史というカテゴリーに止まらず、日本の生い立ちを理論的
かつ合理的に検証されている科学書と言っても過言ではないのだ。
第10章「上野の西郷隆盛像はなぜ『あの場所』に建てられたか」
が個人的には強く印象に残った。
他の章は、著者のコンセプトとおりに歴史の舞台装置に主眼が置か
れているのに対し、西郷隆盛像の説明には、維新政府の「人々」に
対する敬愛の念が込められているのである。
上野恩賜公園にある彰義隊(しょうぎたい)の墓近くに建てられた理由
は・・?最後の素晴しい著者の言葉に、胸が熱くなった・・。
教科書で書かれた日本の歴史は年号と人物が中心であった、一方で、
地形や文化的な考察を加えることで、「静から動的」に歴史を考える
ことができる、充実の一冊である。
に魅了されてしまった。
日本の歴史人物を役者として、日本の独特な地形・インフラを舞台
装置と見立て、独自な見識と見解を展開しているのである。
本書は歴史というカテゴリーに止まらず、日本の生い立ちを理論的
かつ合理的に検証されている科学書と言っても過言ではないのだ。
第10章「上野の西郷隆盛像はなぜ『あの場所』に建てられたか」
が個人的には強く印象に残った。
他の章は、著者のコンセプトとおりに歴史の舞台装置に主眼が置か
れているのに対し、西郷隆盛像の説明には、維新政府の「人々」に
対する敬愛の念が込められているのである。
上野恩賜公園にある彰義隊(しょうぎたい)の墓近くに建てられた理由
は・・?最後の素晴しい著者の言葉に、胸が熱くなった・・。
教科書で書かれた日本の歴史は年号と人物が中心であった、一方で、
地形や文化的な考察を加えることで、「静から動的」に歴史を考える
ことができる、充実の一冊である。
本書は前著『日本史の謎は「地形」で解ける』の続編で(「はじめに」8〜9頁)、『文明・文化篇』とあるのは前著との相違を示すものであろう。但し私は右前著を読んでいないので、右前著との比較について言及は控えたい。本書を概観するところ、歴史を語ると言うよりは(またそれが『文化・文明篇』であると否とに関わらず)、特定の歴史的イベントないしトピックについて、著者の方法論(後述する)に従った考察や謎解きを展開するものと見受けられる。著者の方法論は一貫して独特の歴史観に依っており、それは人間社会ないし「文明」(歴史と観ても良い)をインフラを含めた地形・気象からなる下部構造と、これに立脚した産業・教育・芸術等の人間の営み全体を指す上部構造から成り立っているとする。それ故に上部構造に見える歴史の謎ないし構造全体としての“文化・文明”は、これと因果関係にある下部構造を解析することで解きうるというものである(「はじめに」の論旨から私が要約したものー正確には本文を参照されたい)。
かかる方法論はユニークではあるが、上部構造・下部構造といった概念に基づく歴史の重層構造観念はマルクスの経済発展段階説を彷彿とさせる(実態は全く異なる)。しかし著者の筆致は時として右方法論に拘泥する余り、やや強引な論理論結も散見され、この辺りの評価は別れるところだろう。構成・内容は、「商品の説明」(この上の方)にあるトピックのほか、「信長が天下統一目前までいけた本当の理由とは何か」、「貧しい横浜村はなぜ、近代日本の表玄関になれたか」、「『弥生時代』のない北海道でいかにして稲作が可能になったか」、「上野の西郷隆盛像はなぜ『あの場所』に建てられたか」、「なぜ日本の国旗は『太陽』の図柄になったか」、「なぜ日本人は『もったいない』と思うか」、「日本文明は生き残れるか」などがある。
個人的に印象に残ったのは、「平均寿命をV字回復」のトピックで、大正時代の統計データと東京市長であった後藤新平の経歴、大正10年以降の情況など、説得力ある分析手法と言えよう。また「欧米列国植民地」では、地形・地勢的事情に加え安政年間の震災との関係について著者の方法論から積極的に展開するが、開国一番手のアメリカが南北戦争(1861〜1865)前後の混乱期にあったことなど考慮されるべきだろう。
かかる方法論はユニークではあるが、上部構造・下部構造といった概念に基づく歴史の重層構造観念はマルクスの経済発展段階説を彷彿とさせる(実態は全く異なる)。しかし著者の筆致は時として右方法論に拘泥する余り、やや強引な論理論結も散見され、この辺りの評価は別れるところだろう。構成・内容は、「商品の説明」(この上の方)にあるトピックのほか、「信長が天下統一目前までいけた本当の理由とは何か」、「貧しい横浜村はなぜ、近代日本の表玄関になれたか」、「『弥生時代』のない北海道でいかにして稲作が可能になったか」、「上野の西郷隆盛像はなぜ『あの場所』に建てられたか」、「なぜ日本の国旗は『太陽』の図柄になったか」、「なぜ日本人は『もったいない』と思うか」、「日本文明は生き残れるか」などがある。
個人的に印象に残ったのは、「平均寿命をV字回復」のトピックで、大正時代の統計データと東京市長であった後藤新平の経歴、大正10年以降の情況など、説得力ある分析手法と言えよう。また「欧米列国植民地」では、地形・地勢的事情に加え安政年間の震災との関係について著者の方法論から積極的に展開するが、開国一番手のアメリカが南北戦争(1861〜1865)前後の混乱期にあったことなど考慮されるべきだろう。