学力低下論争 (ちくま新書) の感想

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参照データ

タイトル学力低下論争 (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者市川 伸一
販売元筑摩書房
JANコード9784480059598
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 教育学 » 一般

購入者の感想

学力低下論争における各論者の主張とその後の展開を、わかりやすくまとめている、よい本だと思います。
実は筆者自身、学力低下論争の時には一論者としていろいろと発言をしていたそうなのですが、この本では、論争を客観的に眺めることに徹し、オリジナルな主張は最終章で書くのみに抑えています。文中でも、バイアスがかかった記述にならないようにかなり注意しているのがわかります。

学力低下論争については、それ自体が政策論と結びついているせいか、教育社会学や教育行政からのアプローチが多い気がします。
認知心理学の専門家である筆者は、そのような社会科学的な研究からわかることを、教育を受ける子どもの視点から眺め直しています。
このような見方は、筆者ならではのものだと思います。

個人的には、筆者の学力低下論には賛同できるところが多いのです。
「学力とは?」という定義の問題や、それをふまえた上で「ゆとり教育だから学力が下がる」のではなくて、「学力を上げるためにはゆとり教育がむしろ必要」という主張も納得できるものでした。

欲を言えば、具体的な事例が欲しかったです。
あと、「ゆとり教育」以後だけではなく、もう少し前の教育論争から取り上げてくれると、学力低下論争自体の持つ意味がより鮮明になる気がしました。

学力低下論争を中立的な立場からまとめた本です。

著者は序章において、「学力低下について悲観的か楽観的か」「教育改革に賛成するか否か」という二つの軸を使って論者の立場を整理し、論者は主に3つの立場に分かれることを示してくれます。このまとめが非常にわかりやすい!

学力低下論争は、「学力は低下しているか?」という問い以前に、「そもそも学力とは何か?」といった基本的なところで食い違いがあり、様々な見解を読み比べて見ても、いまいち議論がかみ合ってなくて混乱してしまいがちです。

しかし、本書を地図にして読み返してみると、そのような食い違いが起こっている原因を含めて議論がすっきり整理できるようになる。

一冊目に読むべき本か、それともある程度論争に関する本を読んだあとでまとめ的に読むべき本か、ちょっと判断がつきませんが、私のように論争の迷路に迷い込んでしまった方は、本書を手にもう一度論争本を読み直してみてはいかがでしょうか。

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