奥さまは愛国 の感想

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参照データ

タイトル奥さまは愛国
発売日販売日未定
製作者北原 みのり
販売元河出書房新社
JANコード9784309246499
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

本書は、愛国運動にハマる女性たちの実像に迫った、重厚なドキュメンタリーだ。
本書の肝は、近年盛んとなった「従軍慰安婦」バッシングや排外デモに強い当事者意識をもつ、著者それぞれの視点だ。
北原氏のジェンダー視点、朴氏のマイノリティ視点。
両者は絶妙のコントラストを放ち、愛国女性を語る上で不可欠な両輪の役割を果たしている。
抜群におもしろくて、深く考えさせられる一冊だった。

北原氏は、女性愛国団体の「正義感」「手作り感」や「怒り」に触れ、市民運動に没頭したかつての自分の姿を重ねて、共感する。
また、愛国派の言葉の「わかりやすさ」に、変わりばえしないサヨク・スローガンの「つまらなさ」を対置する。
しかし男女平等・世界105位の日本で、「守ってくれた」男性を立てる一方で同性の「慰安婦」を貶め、韓国人を蔑む愛国女性たちの姿には、強い違和感を抱く。
「普通の頭で、常識で考えて」と叫び、「被害者ぶる」女性たちを侮辱する一方、日本人「慰安婦」の“沈黙”を称えるような男性には同調する、愛国女性たち。
体当たり取材と深い考察を重ねた末、北原氏は、そんな彼女たちの“絶望”を見いだすのだ。

朴氏は、「彼女たちを知ること」が「自分自身を知ることに繋がる」と直感し、排外デモに参加する愛国女性たちへのインタビューを敢行する。
差別意識を隠さない彼女たちの話に耳を傾ける朴氏の、複雑な心境や緊張感が、ありありと伝わってきた。
朴氏は努めて、相手を理解しようとする。
同時に、彼女たちが「聞く耳と相手を感じる心と」「立ち止まり過ちを改める勇気」をもつことを願ってもいるのだ。

葛藤しつつも、粘り強く取材にとりくんだ著者たちの姿勢。
それぞれの視点で深く思考して、紡ぎだされた言葉。
ずしりと心に響いた。
本書は、3.11を経て3年、今の日本の空気を見事に切り取った傑作だ。

私たちは、良きにつけ悪しきにつけ、時代や社会の“空気”に染まりがちだ。
だからこそ、「普通の考え」「常識」などの“思考停止”を促す言葉には、細心の注意を払いたい。

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