Nobody Left to Hate の感想
参照データ
タイトル | Nobody Left to Hate |
発売日 | 2001-07-01 |
製作者 | Elliot Aronson |
販売元 | Holt Paperbacks |
JANコード | 9780805070996 |
カテゴリ | 洋書 » Subjects » Nonfiction » Education |
購入者の感想
コロンバイン高校の事件(1999年)をはじめとした学校における殺傷事件を社会心理学的視点から分析し、このような悲劇を繰り返さないための提言を述べた書。著者は社会心理学の第一人者で、社会心理学入門書の定番 The Social Animal や、同僚の Anthony Pratkanis と共著の Age of Propaganda など、好著をものしている。あるインタヴューで本人が言っているのだが、著者は専門用語で固めるのではなく、普段話しているような平易な言葉で専門的な内容を著すことを心がけている。本書も、大変読みやすい英語で書かれている。具体的な事件を中心に著されたものなので、具体的な問題から入って、常識的な考えでは思い違いをしたり見誤ったりしてしまう点を説得力のある議論で指摘してくれる。コロンバインのような事件やそれを生み出す温床である、いじめや仲間はずれを許容してしまっている学校の雰囲気を問題の根源と指摘する視点や、このような問題に対する、世間に出回っている誤った「解決策」の批判など大変鋭い議論が展開されている。後半の、ではどうするかという具合的な提言についてどう思うかは個々の読者が考えるべき問題である。さらに、同様の問題(いじめや仲間はずれなど)を考える上で重要であり、最近和訳も進んでいるネル・ノディングズの著作などと比較してみるのも一興だろう。