落窪物語 (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル落窪物語 (岩波文庫)
発売日販売日未定
販売元岩波書店
JANコード9784003004319
カテゴリ古典 » 日本の古典 » 古代・中世文学 » 古典文学研究

購入者の感想

 しばらく前に買って放っておいたが、なんとなく手にとったら一気に読んでしまった。本書のあとがきにも「日本版シンデレラ」とあるように本作品は気の利いた少女漫画のように面白かった。しかも本作品は単純に「王子様」と幸せになって継母に復讐するだけではない。その後に実父と継母や異腹兄弟姉妹と和解する部分のボリュームが多く割かれている。このため単なる復讐物語よりも読後感が良く「娯楽小説」としての完成度の高さをを感じさせられた。しかも作中で登場人物の会話などに当時流布していたらしい他の物語が引用されていて、作者と読者が「知っているよね」と目配せし合うような「娯楽小説」らしい楽しさを感じた。同時に本作が成立した10世紀後半にそのような作者と読者の関係が成立していたという文化的成熟度がうかがわれた。さらに物語の最後の方で継母が主人公に感謝はしているのだけれど、それでも時々は機嫌の悪いときに主人公に悪態をついてしまうという描写には、作者の人間理解の水準の高さ、物語としての洗練を見ざるを得なかった。
 筆者はこれまで学校の授業と試験(理系で受ける程度)以外で古文をまともに読んだことはなかったのだが、本文の下についている注を手掛かりに辞書に頼ることなく本書を読み通して、ストーリーと登場人物の心情や生活に没入することができた。これは本書の構成が行き届いているためである。表紙にもそのように作ったと書いてある。それでも苦手だった古文がすらすら読めているように感じられて、そのことも楽しかった。

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