幸福な王子―ワイルド童話全集 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル幸福な王子―ワイルド童話全集 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者オスカー ワイルド
販売元新潮社
JANコード9784102081044
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

「ミンナニ デクノボウトヨバレ ホメラレモセズ クニモサレズ サウイウモノニ ワタシハナリタイ」
読みながらふと、頭の中にうかんできたフレーズは、宮沢賢治が遺したもの。没年37歳、早世の稀代の天才は無名のまま亡くなりました。
この本に収められているオスカー・ワイルドの作品は9編。なんとなく宮沢賢治の作品に通じるものがあると感じました。
賢治が探し続けた(ほんとうの幸)は、“人のために生きる”ことであり、そこに至るために通過する悩みや苦しみさえ避けようとはしません。メモとして残された「雨ニモマケズ」は、そういう尊い覚悟をもちたいという願いが結晶化した言葉です。

ワイルドの書いたこの本の登場人物たちも、ホメラレモセズ クニモサレ ていません。ただ、誰かのことを思い、必死に誰かのために尽くそうとしています。はた目には報われない物語です。ただ本人たちには充実感があります。自分よりも他人を大切に思う心は、それでもいいと言っています。納得して死んでいったのかもしれません。
SNSでよく使われる言葉に承認要求がありますが、ホメラレモセズ クニモサレズ ということは、(他人からまったく承認されない)ということです。それでも不幸にならない理由は、前提として(他人からの承認を求めていない)からではないでしょうか?ツバメは王子のお使いでルビーを届けた後にこう言います。「奇妙ですね、いまはとても暖かい気持ちがするのですよ、気候はひどく寒いのに」
またナイチンゲールにはわかります。学生の悲しみの秘密と、幾晩となくその庭で歌ってきた恋の謎が。だからこそ「死によって完成される恋を、墓のなかでも死ぬことのない恋を」死を賭して歌おうとするのです。

一方で、やたら承認されたがる(過剰承認要求をもつ)人物も描かれています。「ミンナニ イダイナヒトトヨバレ ショウサンサレ ミトメラレ」たい人々です。中でも「忠実な友達」に出てくる粉屋の男はまるで善意がありません。そのくせ弁舌がうまく皆だまされてしまいます。まるでサイコパスのようです。他の話に登場するロケットとスペインの王女は、粉屋と比べればマシですが、彼らは周囲の人がいなければ己の価値を見出せないでしょう。

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