さえずり言語起源論――新版 小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波科学ライブラリー) の感想

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タイトルさえずり言語起源論――新版 小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波科学ライブラリー)
発売日販売日未定
製作者岡ノ谷 一夫
販売元岩波書店
JANコード9784000295765
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 動物学

購入者の感想

言葉のはじまりは歌だったという「さえずり言語起源論」は、ギリシアの神々が音楽の調べにのせて言葉を交わしていたという伝説と同じものに過ぎないのでは?と懐疑的に読みました。
しかし、この本は、長年にわたる研究結果が、実に科学的に明かされています。
ウィリアム・ソープ先生にはじめられた周波数分析器(ソナグラム)を使った小鳥の鳴き声の分析から、小鳥の歌の神経科学が解説され、「歌学習の鋳型仮説」というものが説明され、ヒトの言葉と鳥の歌の本質的な違いを指摘することによって、岡ノ谷先生は言語起源の謎を解く鍵を見つけたと言っているのです。
実験の対象となる動物をめぐる研究員たちの苦労、鳥の歌の分析の苦労は、実にあっぱれとしか言いようがありません。

個人的には、鳥類の大脳と哺乳類の大脳との対応が面白く興味ひかれ、認知情報科学の章では、放送大学の授業でおなじみの故・波多野誼余夫先生や長谷川眞理子先生の話も登場しています。サイエンス好きな読者にはたまらないと思います。

私は、人間の音声コミュニケーションである言語が複雑に進化したことの理由は、性淘汰だけとは言えないだろうと考えました。
岡ノ谷先生の主張する言語起源論の弱点である性的ディスプレイとして進化した言語における性差というものが曖昧な点であることと、アリ社会の働きアリやハチ社会などの働きバチなどのように、人間社会にも子を作らずに社会貢献をして生きて行く人々がいるということを考えると、言語の進化が性淘汰されているとは考えにくいです。
むしろ性淘汰を受けずに、書物などのバトンを介したリレーが行われ、言語は一人歩きをしているかのようにさえ考えられるのです。
現代社会におけるさまざまなメディアの拡大、多様化などを視野に入れた場合、音声コミュニケーションと違った文字コミュニケーションの重要性もまた、人間言語を考える上で必要になってくると思いますし、これを音声コミュニケーションと切り離して考えることはできないと思われます。
これは、言語起源説とは別なテーマとなってくるかもしれませんが。

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