牛 築路 (岩波現代文庫) の感想
参照データ
タイトル | 牛 築路 (岩波現代文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 莫 言 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784006021832 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 外国文学・著者別 » ハ行の著者 |
購入者の感想
文革期の農村を描いた「牛」と「築路」の二編とも,それぞれに面白い。
「牛」
文革期における貴重な生産手段である牛を,貧しさゆえに去勢する話。
抜き取ったタマタマを料理し,何とか食べようと苦心する飼育係の老人と,その横で隠れて味も分からないくらい夢中で口に放り込む少年
肉に対する欲望の描写は,莫言の得意とするところです。
ことさらに文革時代を非難するのではなく,さりげなく笑い飛ばす余裕とユーモア感覚がすばらしいです。
「築路」
道路建設現場が舞台。
登場人物のそれぞれに視点をあわせ,次第にそれぞれの過去が明らかになっていく。
隊長代理の楊(ヤン)は,豆腐売りの人妻・白蕎麦(パイチャオマイ)に恋いこがれるが,その過去は墓場荒らしである。
炊事係の老劉(ラオリュウ)は,過去に生き別れた娘とそっくりな少女を見つける。
来書(ライシュウ)は,偶然見つけた金銀の入った壺を隠すことで必死である。
そして最大の見せ場は,孫巴(スンパ)と白蕎麦の飼い犬との対決シーンである。
この犬が一筋縄ではいかない凶暴ぶりで,なんとこの犬を鈎とナイロン糸でつり上げるというのである。数ページに渡る対決シーンは凄まじい。
何とも言えない読後感が残る中編二編です。
「牛」
文革期における貴重な生産手段である牛を,貧しさゆえに去勢する話。
抜き取ったタマタマを料理し,何とか食べようと苦心する飼育係の老人と,その横で隠れて味も分からないくらい夢中で口に放り込む少年
肉に対する欲望の描写は,莫言の得意とするところです。
ことさらに文革時代を非難するのではなく,さりげなく笑い飛ばす余裕とユーモア感覚がすばらしいです。
「築路」
道路建設現場が舞台。
登場人物のそれぞれに視点をあわせ,次第にそれぞれの過去が明らかになっていく。
隊長代理の楊(ヤン)は,豆腐売りの人妻・白蕎麦(パイチャオマイ)に恋いこがれるが,その過去は墓場荒らしである。
炊事係の老劉(ラオリュウ)は,過去に生き別れた娘とそっくりな少女を見つける。
来書(ライシュウ)は,偶然見つけた金銀の入った壺を隠すことで必死である。
そして最大の見せ場は,孫巴(スンパ)と白蕎麦の飼い犬との対決シーンである。
この犬が一筋縄ではいかない凶暴ぶりで,なんとこの犬を鈎とナイロン糸でつり上げるというのである。数ページに渡る対決シーンは凄まじい。
何とも言えない読後感が残る中編二編です。
比較的初期の作品と聞きましたが情景の描写力は素晴らしい。
赤く沈む夕日や、真っ黒な夜の静寂などがまるで絵を見せられているかのように目の前に浮かび、「マジックリアリズム」と呼ばれる手法を体感できます。
「牛」「築路」とも文革時代の中国の話でありますが、貧しい人達の生活を、ユーモアを交えて、エネルギッシュに描いています。
人間の素のドロドロした部分やギラギラした部分をみせつつ、エンターテイメントとして仕上げる作者の筆致は、様々な制約があるであろうと思われる中国において、過去の体制を批判という形でなく、物語として昇華させることができるのは、才能なんだなあと思いました。
赤く沈む夕日や、真っ黒な夜の静寂などがまるで絵を見せられているかのように目の前に浮かび、「マジックリアリズム」と呼ばれる手法を体感できます。
「牛」「築路」とも文革時代の中国の話でありますが、貧しい人達の生活を、ユーモアを交えて、エネルギッシュに描いています。
人間の素のドロドロした部分やギラギラした部分をみせつつ、エンターテイメントとして仕上げる作者の筆致は、様々な制約があるであろうと思われる中国において、過去の体制を批判という形でなく、物語として昇華させることができるのは、才能なんだなあと思いました。