〈生物多様性〉入門 (岩波ブックレット 785) の感想

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参照データ

タイトル〈生物多様性〉入門 (岩波ブックレット 785)
発売日販売日未定
製作者鷲谷 いづみ
販売元岩波書店
JANコード9784002707853
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 生物学

購入者の感想

生態学の基本から最近話題のグリーンウォッシュまで、広範で複雑な生物多様性保全に関連する話題を網羅して、わずか60ページのボリュームにまとめたことは、賞賛に値する。さすがは「保全生態学の第一人者」と呼ばれる著者である。

しかしこれが本当に「入門」かと言うと、その網羅性ゆえに却って疑問符もつく。本書を読んで全くの初学者が生物多様性の大切さを実感できたり、その保全を“我がこと”として感じるようになるかというと、難しいだろう。一つ一つのテーマの掘り下げが浅いものにならざるを得ないためだが、むしろ何か一つを取り上げて、その奥深さを見せる部分があったほうが、初学者にとっては魅力的だったような気がする。(ただしそれでは、このボリュームには収まらなかっただろう。)

私には本書は、歴史の教科書の巻末についてくる年表のように感じられた。全体像を把握するためには非常に役立つ。しかし年表を読むだけでは歴史を学んだことにはならず、むしろある程度学んだ人間の復習にこそ有益である。本書もそのような存在だと思う。

なお、このレビューの本旨からはやや外れるが、著者は本書の中で、日本の若い世代が自然とふれあう機会が減り、学校教育でも自然史が軽視されてきた現状を踏まえて、

> そのため、生物多様性を具体的に認識し、また、適応戦略を読み解く眼力を備えた人材が少ない。

と書く。

> それは、日本社会が抱えているさまざまな「能力」喪失の中でも、もっとも深刻な問題の一つではないか

と指摘した部分は、本書中で最も共感した部分であった。

> 昨今、地球温暖化や外来種問題に関して、必ずしも十分な専門的知識を持たない「専門家」の危機の否定・軽視の発言がもてはやされる傾向がある。
> 人々がそれらに同調しがちなのは、まひした心に、それらが心地よく響くからだろう。

という指摘と共に、是非、心にとどめておきたい。

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