ウイダーの副王 の感想
参照データ
タイトル | ウイダーの副王 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ブルース・チャトウィン |
販売元 | みすず書房 |
JANコード | 9784622079088 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学 |
購入者の感想
『ウイダーの副王』(ブルース・チャトウィン著、旦敬介訳、みすず書房)は面白いが、口の中に強い苦みが残るモデル小説である。
ブラジルでの生活に見切りをつけた27歳の極貧白人、フランシスコ・マノエル・ダ・シルヴァは、1812年、大西洋を渡り、西アフリカで奴隷商人として身を立てる決心をする。徒手空拳で仕事に打ち込み、当地のダホメー王から「ウイダーの副王」という肩書きを与えられた彼は、ウイダーの地で巨万の富を築き、権勢を振るう。しかし、その栄耀栄華も長くは続かない。
因みに、ダホメーでは「宮殿の一番奥の敷地に、王は宦官たちと3000人の武装した女兵士(アマゾン)とともに暮らしていた」。ダホメーでは女のほうが男よりも遥かに獰猛な戦士だったので、王は徴兵係官に村を巡回させて最も筋肉質の処女たちを兵隊にとったのである。
フランシスコをフランシスコ・マノエル・ダ・シルヴァ一族のヒーローとすれば、いろいろな女との間に混血の息子63人、娘の数は不明だが、ともかく数多の子供たちを儲けた彼が衰退期を迎えてから授かった末娘、エウジェニア・ダ・シルヴァはヒロインと言えるだろう。120歳でエウジェニアがこの世を去った時、フランシスコが72歳で死去してから117年が経過していた。
この小説を形作っているのは、酸鼻を極めた奴隷売買の実態、栄枯盛衰が避けられない人の世の宿命、これらを引っくるめて何もかも押し流していく時の流れの威力である。
ブラジルでの生活に見切りをつけた27歳の極貧白人、フランシスコ・マノエル・ダ・シルヴァは、1812年、大西洋を渡り、西アフリカで奴隷商人として身を立てる決心をする。徒手空拳で仕事に打ち込み、当地のダホメー王から「ウイダーの副王」という肩書きを与えられた彼は、ウイダーの地で巨万の富を築き、権勢を振るう。しかし、その栄耀栄華も長くは続かない。
因みに、ダホメーでは「宮殿の一番奥の敷地に、王は宦官たちと3000人の武装した女兵士(アマゾン)とともに暮らしていた」。ダホメーでは女のほうが男よりも遥かに獰猛な戦士だったので、王は徴兵係官に村を巡回させて最も筋肉質の処女たちを兵隊にとったのである。
フランシスコをフランシスコ・マノエル・ダ・シルヴァ一族のヒーローとすれば、いろいろな女との間に混血の息子63人、娘の数は不明だが、ともかく数多の子供たちを儲けた彼が衰退期を迎えてから授かった末娘、エウジェニア・ダ・シルヴァはヒロインと言えるだろう。120歳でエウジェニアがこの世を去った時、フランシスコが72歳で死去してから117年が経過していた。
この小説を形作っているのは、酸鼻を極めた奴隷売買の実態、栄枯盛衰が避けられない人の世の宿命、これらを引っくるめて何もかも押し流していく時の流れの威力である。