日本語を作った男 上田万年とその時代 の感想

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参照データ

タイトル日本語を作った男 上田万年とその時代
発売日販売日未定
製作者山口 謠司
販売元集英社インターナショナル
JANコード9784797672619
カテゴリ人文・思想 » 言語学 » 日本語・国語学 » 日本語研究

購入者の感想

まず、「はじめに」でも言っているが、夥しい引用文を新旧問わず、すべて常用漢字と新仮名遣いに改変・統一してしまっている点。漢字はともかく、仮名遣いは本書のテーマである近代日本語の表記・表現の変遷と密接な関係があるのではないか。お奨めの漱石まで「新仮名」にされては、ここに根本矛盾が生じやしまいか。さらに、丸谷才一の文などは例外なのか、仮名遣いはママである。もうこれだけで、日本語の流れが読めなくなると思うが、如何だろうか。
「学術書であれば」そう「すべきであろう」と書いてあるが、何より「読みやすさを優先する」というのは、いくら素人相手の一般書でも、その学問的姿勢は不誠実である。「出典は明記したので」容易に原文に当たれるだろうとは、誰に向けての言葉なのか。専門家はともかく、著者が想定している一般読者には、そう容易なことではないのと考えるのが普通ではないか。この一点を以てしても、この本が結果的に底の浅い、味わいの薄いものになってしまったと感じるはずなのに、誰も指摘しないのは怪訝である。

次に、著者は森鷗外を悪者にすること性急なあまり、恣意的か、あるいは無知によるものか、かなり強引な曲解的な引用をしている。
一点だけ挙げておく。
鷗外について露伴が「心は冷い男」と評したと紹介したあとで、こういう文がある。(370頁)

また、高橋義孝『森鷗外』には、「鷗外を訪問したのち芥川龍之介のたちまち洩らした感想の一語『インヒューマン』は深く鷗外の本性を衝いたものとしていい」と記される。

このくだりを読んだ小池昌代は、「中央公論」(2016年6月号)の書評で、興味深いエピソードだと紹介しているが、そこにはご丁寧に、――「インヒューマン」(人情味のない、冷酷な)――とカッコで注を入れている。「インヒューマン」にはそういう意味もあるし、本書の文脈ではそう解釈しても仕方がないから、これは小池の罪ではないが、芥川の洩らした「インヒューマン」は、実はニュアンスが違うのである。

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