四万年の絵 (月刊たくさんのふしぎ2016年7月号) の感想

アボリジニと呼ばれるオーストラリアの先住民族たちによって何千年、あるいは何万年にもわたって描き続けられたという岩絵。この本は鮮やかなカラー写真の数々とやさしい文章によって、その岩絵をめぐる人々の考え方や歴史、そして現地に住む動物などを紹介している。それには現地の人々に信じられてきた精霊たちの紹介もふくまれる。

この本の見どころは、やはり美しい岩絵の写真の数々だろう。独特なデフォルメとしぶい色づかいによって描かれた岩絵自体はもちろん、それの描かれた岩の質感までもが鮮明に見てとれる。“古い絵の上に新しい絵が、いくつもいくつもかさねてかかれている”(p.8より)という重層性がよくわかる写真もあれば、描かれた個々の人物や動物や精霊などがピックアップされた写真もある。

構成もよく練られていると思う。岩絵の説明から、それを描いた人々の営みを浮かび上がらせる。次に、彼らがヨーロッパの人たちに虐げられた歴史について触れられ、さらに彼らが自分たちの伝統的な生き方や考え方を見直そうとしている現状が語られる。巻末に、この本で紹介された岩絵のある場所を示す地図がのせられているのも親切だ。