泥の蝶 インパール戦線死の断章 の感想

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タイトル泥の蝶 インパール戦線死の断章
発売日2013-11-01
製作者津本陽
販売元幻冬舎
JANコード登録されていません
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 日本文学研究

購入者の感想

本書は最も過酷で悲惨なインパール作戦を描くが、ビルマ方面軍河辺正三中将や第十五軍牟田口廉也中将の愚と、祭・烈・弓の各師団長の悲劇という話ではない。第十五軍作戦前総兵力155千名、犠牲者124千名、犠牲者率80%の作戦から生還した31千名(ビルマ方面軍兵站参謀倉橋中佐報告)という状況のビルマ作戦に参加の、兵、下士官、下級将校の方々に個別に、或いはビルマ会の例会で取材した貴重な作品だ。作戦時の兵隊1名の標準的装備は、毛布、外被、鉄帽、衣料、糧食7日分、手榴弾5発、小銃、弾120発、その他で約37kgという。山砲兵となれば更に気が遠くなる。行軍は山を越え、渓谷を下り、また坂をよじ登るという連続だ。3〜4月は、湿気が極めて高く気温は40度を越え、風で身体は火であぶられる様で、川や井戸の水は殆ど無く、全身の汗で塩は噴き尽くす。補給は全くない。栄養失調とマラリアの高熱で体力消耗は甚だしく、行軍中に躓き倒れれば最早起き上がれない。戦友はその場に銃と手榴弾と籾を残して、別れた後には爆発音が響く。 ジャングル行軍中はゲートルや軍靴やあらゆる隙間から蛭が潜り込む。性器に入ると厄介だ。軍袴が血で真っ赤になる。尻から腸に入る場合もあるという。 武器や装具、衣服、ゲートル、靴は全て失い、褌一つでよろめきながら前線から戻る兵の足は、雨にふやけ異様に真っ白だ。樹林に座り込み息絶えている兵、道の真ん中に伏して泥人形になる兵、手榴弾自決し首から上がない兵、身体のあらゆる場所に無数の蛆虫が団子状に蠢く。服・靴は剥ぎ取られている兵。アメーバ赤痢の下痢患者は血便の垂れ流しで下半身は裸の野戦病院。弾薬も補給がないので、戦闘も基本的には夜間に肉弾戦で銃剣突撃だ。もう生きられぬ、前途を見限り、つまらない現世に厭き果て、冥途の友に逢いに行く、もう苦しむこともない、そういう心境で夜襲を決行する。一方で、後方の兵は前線に届かない補給物資が豊富で元気だ。牟田口閣下のお好きなものは、一に勲章、二にメーマ、三に新聞ジャーナリスト。軍司令部の牟田口は同行の芸者と戯れ、最後は将兵を置いて、参謀達や芸者と共に逃亡する。牟田口を良く言う人は勿論いない。

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