「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトル「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者山竹 伸二
販売元講談社
JANコード9784062880947
カテゴリ » ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想

購入者の感想

大きな社会の価値観が揺らぎ、身近なひとに承認を求める。しかし、身近な人の心理は不安定なため承認不安が生じる。という筋立ては簡潔でわかりやすく、承認の問題を考察したい人にはおすすめである。

残念なところをあげれば、最終章の解決策がまったく解決策になっていないことだ。身近な人に承認を求める「空虚な承認ゲーム」を脱するには、「「ありのままの自分」を受け入れてくれる存在」が重要というのは、まったく解決策になっていない。「承認の不安を解消するには、承認を得ることだ」と言っているのと同じだ。

期待して読み進めた結果、最後にはしごを外された気分。

 今や「認められたい」という欲求は、リアルかネットかを問わずいたるところに転がっている。というよりも、誰かに見られていなければそれだけで不安、「便所飯」や「無縁社会」等の言葉が生まれ持て囃されるのも、そういった時代の反映と言えよう。本書『「認められたい」の正体』は、承認を哲学、心理学の観点から考察し、承認不安をいかに超克するかを模索する。

 しかし、本書のキモというのは、この息苦しい承認不安を乗り越える術、というよりも、人間が承認を渇望するそのプロセスと承認の区分を、現象学やフロイトの知見をもとに解説したところ、言い換えれば「承認」というタームから現代思想をした、というところにあるだろう。

 承認を「ありのままの私」(評者自身はそんなものがあるのか疑っているが)を許容してもらえる「親和的承認」、ある特定の集団からの「集団的承認」、普遍的にその価値が認められる「一般的承認」に区分した著者は、現代において承認不安が勃興している背景に、それまで共有されていたはずの価値観の衰退があると説く。「一般的他者の視点」からの承認が満たされなくなった現代人が、偏った価値観を持つある特定の集団内での「空疎な承認ゲーム」にかまけたり、自己の中に耽溺するニヒリズムに陥っていく、というのだ。

 現状分析的には、リオタールあたりから続く「大きな物語」論のパラダイムから抜け出せてないが、この承認のプロセスはある程度評価できる。ただ、この解決策として著者は「一般的他者の視点」を持てというが、それができてりゃやってるよ、という話ではある。それに、エロス的な承認を一般他者からの承認で代替できるのだろうか。さらにいえば、少々嫌味っぽいが「承認を得るために『承認について語るゲーム』」も始まっているといえなくもない。こういうときこそ、シンプル イズ ベスト、人の目なんか気にするなという言葉が、地味に効いてくるんじゃないかと、ふと思った。

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