権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)
発売日販売日未定
製作者なだ いなだ
販売元岩波書店
JANコード9784004120360
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究

購入者の感想

この本は、今から30年近く前に書かれたものです。著者のなだいなださんは、慶応大学卒の有名な作家・精神科医です。この本では、最近もはやっている、対話形式で、権威と権力の違いや、それがどこからきて、それに対してどういう立場をとればいいのか、といったことが論じられています。一般に、権力は、人にいうことをきかせるときに使われますが、権威は、いうことをきく側の方が感じる心理だという点が異なっています。では、人はどういうときに、権威を感じるのでしょうか?これは、対等ではない関係において、依存者の心理を持っているものが権威を感じやすい、といわれます。面白いのは、権威的な人間関係が強調されるときには、必ずといってよいほど、親子関係が持ち出されることが多いそうです。例ば、天皇と国民の関係、神と人間との関係、などです。当初は親に権威を感じ、子供はいうことをききますが、やがて一人前になって対等になると、権威を感じなくなります。そうなると、子供は親のいうことをきかなくなります。権威の通用しない対等な人間にいうことをきかせるには、権力に頼る人間関係が生じる、と説明されています。さらに、なぜ子供は権威に従うのか、ということを考えると、そこには自分が知らないことに対する不安がある、ことが分かります。つまり、自分の内部にある漠然とした対象のない不安が、権威に頼る心理を作る、ということです。逆に、権力に服するのは、外側からの力に対する具体的な恐怖感がある点が異なります。

「権威」と「権力」と聞けば、はじめに政治学の専門分野と捉えてしまうかもしれないが、本書は、権威と権力を親子関係といった普段の生活意識に基づくものから、職業やメディアそして政治までを巻き込み、幅広く身近に見つめなおそうと試みている好著だ。
高校生と医者の二人の対話という設定で議論が進んでいき、医者がやさしく諭しながら話しをリードしていくので、初め「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著)的雰囲気が頭に浮かんだが、後半に進むにつれて高校生の質問や考え方もかなりしっかりしてきて、こと後半の政治に関することでは、その内容による時代背景の違いにやや戸惑うかもしれないが(1974年初版)、ほぼ対等に議論を交えることに驚きを覚える。

とはいってもやはり、本書の魅力は、権力と権威をずっと身近に感じて考えることだ。
「〜の権威が失われた」と簡単に耳にするが、それを回復することとは?
「海外は〜だから、日本も〜するべきだ」といった言葉に潜む権威やそれに対してどう考えればいいのか?
人が権威を信仰してしまう心理的背景とは?

個人的に印象に残ったところは、「組織は感情もなく意思もない」と語られた部分。つまり組織や集団を擬人化するのではなく、「組織の意思は個人の意思」と客観的に考える視野である。情報過多の時代だからこそ、権威や権力によって自分を見失うことなく生きていくために、本書を是非多くの人に勧めたい。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)

アマゾンで購入する
岩波書店から発売されたなだ いなだの権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)(JAN:9784004120360)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.