応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書) の感想

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参照データ

タイトル応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者呉座 勇一
販売元中央公論新社
JANコード9784121024015
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

 応仁の乱の難解さについては、例えば源平合戦や関ヶ原の戦いなどと比較すると分かりやすい。なぜ戦乱が起こったのか、誰と誰が戦ったのか、最終的に誰が勝ったのかなどが複雑でよく分からないのだ。また最近の研究では、日本史における応仁の乱の意味付けが低下してきているという。つまり、「応仁の乱を境に下克上が日常化する戦国時代へ突入」というような、従来の見解は否定されつつあるらしいのだ。以上の点を踏まえつつ、本書は応仁の乱の「入口・出口・中身」を検証することで、11年と長きにわたって続いたこの戦乱が日本社会全体へどのような影響を与えたかを考察しようとするものだ。そして本書は、『経覚私要鈔』及び『大乗院寺社雑事記』という興福寺僧の日記を主な史料とし、その記主である経覚と尋尊を主人公に仕立て、2人の視点によって応仁の乱の全体像を描いている点に大きな特徴がある。
 大和国では、衆徒(武装した比較的身分の低い僧侶)・国民(大和国の地元武士)間で起こっていた争いが、興福寺と幕府に対する反乱へと発展。京では、嘉吉の変や畠山氏の内部分裂と共に諸大名の合従連衡が起こり、足利義政の優柔不断さも手伝って応仁の乱はとうとう勃発する。当初は短期決戦の様相を呈していた戦いも、参加当事者の様々な思惑が複雑に絡み合い、長期化していく。乱終盤では、山名宗全・細川勝元の両軍総帥が講話交渉もせずに各々の政権を投げ出して辞任してしまうため、戦いは更にだらだらと続いてしまうのだ。
 乱の当事者の1人である、畠山義就に対する著者の人物評が興味深い。軍事的才能に加え守護家生まれにもかかわらず幕府の命令に従わない、権威をものともせずに実力主義を貫く義就の行動に対し、著者は戦国大名的な存在であると指摘する。また、山城国一揆が起こった背景のひとつに、この当時は守護が国人を編制するのではなく、国人の側が主体的に守護などの有力者と主従関係を結ぶという「家臣が主君を選ぶ」ことが普通に起こっていたとする、近年の学説を著者は紹介する。室町時代で既にこのようなことが日常化していたことが、応仁の乱を経て次の戦国時代へ繋がっていくのだろう。更に細川政元の起こした「明応の政変」により「2つの幕府」が並立するのだが、この明応の政変こそが戦国時代の幕開けであるという最近の研究結果は、非常に興味深い。

批判的な声もみられるが、これは新書として、入門書として読むと失敗するからである。
よくある「図解・ビジュアル」で人間の相関図といったものがあれば、読みやすくなったかもしれないが、これだけ登場人物が多く、昨日味方だった者が明日は敵という状況では図も大量に必要になってしまうだろう。
私としては、極めて明快であったと評したい。

くそ坊主や優柔不断な将軍もこの時代に「生き残る」ために東奔西走するところが何とも人間臭い。
また、守護たちも、もっと民衆に対して上から支配する感じだったと思っていたのが、意外に民衆の支持を得るための行動が多いのも新たな発見だった。やはり、日本はヨーロッパや中国との支配関係とは異なるのかなとも感じた。

もちろん、学術書としては細かいところの解説は不十分であるが、それは学術論文ではないので問題ではない。
そもそも歴史は当時の数少ない文献や遺物より類推するしかない。
その視点を外さず、と言っても司馬遼太郎さんが書くような物語にもならずに書き示す著者の力量に感服する。

人間関係と各々の利益が交錯しすぎて「乱」が長引いていく姿は現代にも通ずることであることを肝に銘じたい

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