プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書) の感想

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タイトルプロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)
発売日販売日未定
製作者深井 智朗
販売元中央公論新社
JANコード9784121024237
カテゴリ人文・思想 » 宗教 » キリスト教・ユダヤ教 » キリスト教一般

購入者の感想

プロテスタントにはなぜ、長老派とか再洗礼派などの派閥がいろいろあるのだろうと疑問に思っていたので、本書を読んでみた。そもそも、ルターはカトリックへの対抗運動を始めたつもりではなかった。贖猶状でもうけるローマ教皇に疑問を呈しただけなのに、それが社会に渦巻く矛盾に火をつけてしまった。例えばルターに刺激されてドイツ農民戦争が起きている。ルターがこの運動を弾圧することに賛成した点に彼の真意が伺える。ただし、ルターは剃髪をやめ、しかも妻帯するなどの行動でカトリックの戒律に別れを告げた。彼の教説で大事な事は、全て聖書に基づいて誰でもが司祭になれるのだ、と言った点にある。それゆえ、彼は聖書をドイツ語に翻訳したわけだ。そして、この教説が様々な解釈を許すプロテスタントに分派が多い事を説明する。

プロテスタント諸派は、それでも大きく2つに分けることができる。教会と支配体制が結びついた古プロテスタンティズムとそれを否定した新プロテスタンティズムである。前者は、ルター派やカルヴィン派、英国国教会であり、後者はそれを否定、特に英国国教会を批判するピューリタンの人びとだ。古派では、幼児洗礼により、人は自動的に生地の教会に組み込まれるが、新派では、主体的に洗礼を受ける事により教会を選ぶ。だから、新派の町に教会はひとつではなく、いろいろある。ある種のピューリタンの人びとは、やがてそこから逃れアメリカに移住した。皮肉な事に、体制と教会の接続を批判した長老派や会衆派が、新天地ではより自由を求める洗礼派を抑圧したのだ。ただし、新派の人たちの価値観こそが、アメリカニズムを形成した。私的な団体が自由な世界で競争し、結果的に勝利した側が神の意にかなう事を証明できたことになる。国家からの束縛を嫌い、未だに武装民兵の理念を認めるアメリカは、この観点からこそ良く理解できる。しかし、その影で古派的な精神もアメリカに息づいている事が指摘される。それは、公立小学校での、あるいは大統領就任式での神への宣誓にあらわれている。体制との結合を敵視する新プロテスタントのはずなのに、ここには古プロテスタントの精神が生き延びている。ちなみにルター派が多いドイツでは(特に北部)、教会が税を徴収する事(実際の業務は税務署が代行)と公教育での宗教教育の義務づけが憲法に書かれている。

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