7つの名前を持つ少女 の感想

　中国を舞台にした『ワイルド・スワン』は衝撃の内容だったが、北朝鮮を舞台とする本作は、「衝撃」というよりは、スリル満点でノンフィクションであることを忘れそうになるほど「面白い」。訳者があとがきに書いているように、「面白い」というのは不謹慎かもしれないが……
　ところで、訳はとても読みやすく、すばらしい。冒頭部分（Chapter 1、原文は「なか見！検索」で確認）の代名詞について、云々する評があるようだが、ここは原文がa young womanをsheと言い換えたときに「彼女」と訳したのであり、その時点では、それが著者の母だということを読者には明かしてない以上、当然の処置である。現に他の箇所では「父」「母」を使っている。
　同じ訳者の『マクロウィキノミクス』なども読みやすい訳で感心しきりだったので、一言付け加えさせていただいた次第である。