ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトルポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書)
発売日販売日未定
製作者水島 治郎
販売元中央公論新社
JANコード9784121024107
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 著者はヨーロッパ政治史を専門とする千葉大学の教授。本書は、先進各国においてポピュリズム政党や団体が躍進している昨今の情勢を踏まえ、その成立背景や各国における特徴、政治的な影響などを分析したものだ。
 ポピュリズムとはすなわち、民衆の参加を通じ「よりよき政治」目指す「下」からの運動であり、既成の制度やルールに守られたエリート層の支配を打破し、直接民主主義によって人々の意思の実現を志向する、急進的な改革運動であると著者は定義づける。つまり現代のポピュリズムとは、デモクラシーの1つの重要な側面でもあるのだ。
 続いて、各国・地域ごとのポピュリズムの特徴が解説される。ラテンアメリカでは、貧困層に属する人々の期待に応えるという構図が、ポピュリズムを生み出す土壌となっている。ヨーロッパでは、政党間の政策距離が狭まったこと、既成政党が弱体化し無党派層が増大したこと、及びグローバル化に伴い社会経済的な変容、とりわけ格差の拡大が起こったことの3つを、ポピュリズム躍進の理由として取り上げる。そして、デモクラシーを錦の御旗にして、エリート批判と移民排除をすすめようとしているのも、ヨーロッパのポピュリズム政党の特徴だ。ルペン党首率いるフランスの国民戦線を始め、オーストリアやベルギーの政党、また、デンマークやオランダなどのように極右とは明らかに距離を置き、デモクラシー的諸価値を前提として成立した政党などが紹介される。
 イギリスでは、国民投票によるEU離脱が記憶に新しいが、高齢世代と若い高学歴世代間の価値観の相違や、既成政党と「置き去りにされた労働者層」との間の断絶など、社会的分断の存在が大きく影響しているという。アメリカでトランプ大統領が誕生した構図にも似ているとの著者の指摘に、大いに納得する。

表題に惹かれて読みました。欧米での、最近の、いわゆるポピュリズムという出来事を招来した風潮にいささか興味がありました。私は滞欧経験が永いこともありますので。
結論は、私の勝手な思い込みは期待はずれだった、です。表題からは、民主主義という政治哲学の本質との関わり合いを扱っているように読めますが、そうではありませんでした。ポピュリズムと呼ばれている様々なイベントの背後にある思想の政治学的な意味合いを論じているのではなく、メディアがそう呼んでいる運動の個々の様相をジャーナリスティックに解説し、それを寄せ集めているのでしたから。
例えば、最初に「ポピュリズム」の定義から始めていますが、それも全く恣意的です。学問的議論ではない、という批評がこれまでのレビューにありましたが、同感です。
もともと民主主義にはポピュリズム的要素が入っているので、それを取り上げている論考は、古くからいくらでもあります。それに新たな一石を投じようということなら、もっとずっと精密な分析と議論が必要でしょう。
フランスのルペン、アメリカのトランプなどに代表される直近の運動を取り上げて、その経過、背景などを述べているのが後半の大部分で、ここだけ読めば、それらの現象についてはそれなりの知見は得られるのでしょうから、そうした執筆の意図をはじめから掲げて置いてくれればもう少し印象が違ったかもしれません。もって、他山の石とせよ、というのでしたら、分からないでもありません。
他のレビュアーの方も、同じような印象をお持ちのようで、それをどう評価するかで、意見が分かれているのでしょう。
そこで、イージーゴーイングかとも思いましたが、ちょうど真ん中の評価といたします。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書)

アマゾンで購入する
中央公論新社から発売された水島 治郎のポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書)(JAN:9784121024107)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.