敗走記 (講談社文庫) の感想

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タイトル敗走記 (講談社文庫)
発売日2010-07-15
製作者水木 しげる
販売元講談社
JANコード9784062767385
カテゴリ » ジャンル別 » コミック・ラノベ・BL » コミック

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「敗走記」、「ダンピール海峡」、「レーモン河畔」、「KANDERE」、「ごきぶり」、「幽霊艦長」の六つの中編を収めた作品。水木先生の戦争体験に根差した作品で、戦争の悲惨さが精緻かつ迫力ある描画で映し出されている。

「敗走記」の舞台はニューブリテン島で、水木先生と戦友をモデルにした二人の兵卒の敗走の模様を描いたもの。戦死した友を悼む心情と、生き残った自分が戦争の語り部となるべき使命感がヒシヒシと伝わって来る。「戦争は人間を悪魔にする」とのメッセージが切ない。「ダンピール海峡」はニューブリテン島の西側の海峡。軍旗を守るために幽鬼と化した一兵卒の姿を描いて鬼気迫る。「レーモン河畔」の舞台もニューブリテン島で、ホセと言う一家の美人姉妹の数奇な運命を描いた作品。戦場下で、様々な意味で無傷のままで生き残った美人姉妹の姿を描いた美談と言えるが、兵士達にも善意が残っていた事実を記して置きたかったのであろう。これも実話に基づいている由で、姉妹の一人は(執筆当時)東京に住んでいたとの事。「KANDERE」の舞台はグリーン島。島の娘と結婚した兵卒の姿を通して、極限状況下における信頼感・同族関係、そして軍隊教育がもたらした思想の硬直性を扱った作品。ちなみに、「KANDERE」とは「仲間」の意で、水木先生の信条が窺える。「ごきぶり」は、戦犯として処刑された兵卒の一生を、母親が「ゴキブリの一生」と嘆息する様を描いたもの。「幽霊艦長」は、「白鯨」を思わせる艦長の闘いへの執念を描いたもの。

戦争の悲惨さを描きながらも、その中にある種の"温もり"を感じさせる水木先生らしい作品。「白い旗」程のストレートさは無い代わりに、多角的に戦争を見つめ直した傑作中編集。

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