ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか―工学に立ちはだかる「究極の力学構造」 (ブルーバックス) の感想

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参照データ

タイトルロボットはなぜ生き物に似てしまうのか―工学に立ちはだかる「究極の力学構造」 (ブルーバックス)
発売日販売日未定
製作者鈴森 康一
販売元講談社
JANコード9784062577687
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 工学 » メカトロ・ロボット工学

購入者の感想

 著者の鈴森康一氏は、企業でロボットの設計を行われた後、大学教授として同分野の研究を行われているそうである。そのため、本書には設計の実務から得られた経験と、学術的な調査研究から導出された広範な視野に基づく知見がおさめられている。

 主な記述分野は機構、構造設計に関連しており、たとえば人間の腕とマニピュレータやパワーショベルの構成の類似性が、実は作業自由度を確保しようとする設計行為の必然的な帰結であったり、あるいは単純に見える膝の関節と同じ可動範囲をもつ回転機構の設計が、機械工学上はかなり難しいなど、機械と生物の興味深い相似性や相違点を様々な例でわかりやすく解説されている。

 他にも動力装置としてのモーターと筋肉の対比、動作機構における「いい加減さ」の効用、自然界における微細構造のさまざまな機能など、機械工学や、生き物の巧妙さに関連した、興味深い話題が豊富に示されている。

 もっとも示唆に富んでいると感じたのは、機械と生命の「造られ方」に起因する違いに触れられた部分で、「なぜ生き物は金属を使わず、代わりに弱く朽ち易い材料で作られるか」、「なぜ生き物には車輪のような回転機構が使われないか」といった命題の解説には、眼から鱗が落ちた思いがした。

 さらにここから、著者はこれら生物の「設計制約」を乗り越えることで、自然の創造物である生き物を超える機械の設計、製造の可能性にまで言及されている。機械設計を商売としている評者にとって、このヴィジョンは大変魅力的な夢のあるもの(もちろん簡単に実現できるものではないにしても)に見える。
おそらく、本書ではあまり触れられていない情報処理/伝達系に関しても同様の論理が演繹できるのではないかと考えると、「人間がものを造る」という行為の可能性を大きく拓くヒントが得られそうに思える。

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講談社から発売された鈴森 康一のロボットはなぜ生き物に似てしまうのか―工学に立ちはだかる「究極の力学構造」 (ブルーバックス)(JAN:9784062577687)の感想と評価
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