自発的隷従論 (ちくま学芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル自発的隷従論 (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
製作者エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ
販売元筑摩書房
JANコード9784480094254
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 西洋思想 » 西洋哲学入門

購入者の感想

 こんな凄い論文が16世紀に、しかも十代の少年によって書かれていたとは。。。
 人間社会の隷従と圧政とのポジティブフィードバック機構が、明瞭に示されている。人間が自ら自由を放棄するのは「慣習」による。「国民が隷従に合意しないかぎり、その者はみずから破滅するのだ。なにかを奪う必要などない、ただなにも与えなければよい。」
 ラ・ボエシは、「哀れでみじめな、愚かな民衆よ、みずからの悪にしがみつき、善には盲目な人々よ!」「その敵がもつ特権とは言えば・・・あなたがた自身が彼に授けたものにほかならないのだ。」(21-2頁)と明言している。「自発的隷従」は、「愚かな民衆」の態度のことで、これが「圧政」を維持する「薪」となるのだ。明らかに民衆こそは圧政の共犯者である。共犯者であるがゆえに、共犯をやめれば圧政もなくなる、と説くのである。これはガンディーの非暴力不服従闘争の理論の完全な先駆である。
 更に圧政者に盲従する「小圧政者」の豊かでみじめな生活ぶりも的確に描かれている。この部分は、私の『東大話法』をめぐる一連の著作のまぎれもない先駆で、知らなかったことを恥じる。山上氏は、この難しい古いフランス語をわかりやすく訳すという偉業を成し遂げたが、それには十数年もかかったという。

 一方、「監修者」の西谷修氏の「解説」は、まったく違った議論をしている。
 彼によれば「小圧政者」の態度が「自発的隷従」だという。そして「その底辺には、圧政を被り物心両面で収奪されるばかりの無数の人々が置かれている」として、一方的に収奪されている「民衆」を想定する。圧政者はパンとサーカスとで彼らを慰撫して気を逸らさせるので、民衆も支配の継続を望むようになるという。つまり、「圧政者⇔小圧政者」関係(=自発的隷従)と、「圧政者・小圧制者⇔民衆」関係(慰撫)という二段構えになっている。これでは、民衆が不服従を貫いたところで、圧政はなくならない。「一斉蜂起」かなにかがないと、体制は崩壊しない。
 西谷氏は、本当に本文を読んで解説を書いたのだろうか?

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