軍事学入門 (ちくま文庫) の感想

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タイトル軍事学入門 (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者別宮 暖朗
販売元筑摩書房
JANコード9784480423412
カテゴリ » ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想

購入者の感想

「平和とは単に『祈る』『願う』では達成されません。仮想敵国に戦争を思いとどまらせる手段は自らの軍事力、および同盟国の軍事力となります」。

軍事学の本。Q&A形式で淡々と書かれている。古来、戦争の勝利には、野戦軍主力を殲滅させること、首都を占領すること、敵指導部を壊滅させることの3つの形があるが、このうち野戦軍主力の殲滅が近代戦争における主力となった。世界大戦による戦死者は、ほとんど抵抗ができない状態で組織的に行われる大虐殺事件の死者より少ない。警察とは異なり軍隊は兵站組織を持っている。仮想敵国との間に緩衝国が存在することが平和維持に有効。ロカルノ条約(1925年)と、これを元に1929年に日本が批准したケロッグ=ブリアン条約は「戦争を国策の手段(外交紛争解決の手段)にしない」ことを定めている。実際は、戦争は他国からの先制攻撃で引き起こされることがあるため、一方的な軍縮はかえって侵略される危険を増す。戦争をおこさないようにするには、まず先制攻撃を禁止すること。他国の領土への侵攻は相手国に比べて補給や移動で不利になりがちで、長期駐留はコストの増大を招く。シェフリー・プランが失敗したのはベルギーの中立を侵犯したことでイギリスが参戦したからであり、太平洋戦争が日本の敗北に終わったのは南方資源に関わる国だけと戦争をすればよかったのにアメリカに奇襲開戦を挑んだから。塹壕は普通3線以上の塹壕線からなり、膠着するとさらにその前進壕の後ろにも3線の予備壕が掘られるので、これを攻略するには電撃戦で1回で全縦深を突破しないと立ち往生して突出部を形成してしまい左右から銃砲火を浴びる、他、といったようなことが書かれてある。

もっとも、内容的にはちょっと古く、例えば「中国は大きな新興国ですが大国(列強)ではありません。そのGDPは日本の五分の一程度であり」という現在の実情とは合わないような記述がある。無人兵器など最新兵器が与える影響についても書かれていない。

平和の維持のためには軍事というものを近代史に照らして学ぶべきであり、この本はその役目を果たしていると感じた。
この本には目から鱗が落ちる話が多かった。以前は非武装中立の思想に惹かれるものを感じていたが、この本を読んだ結果、自国を弱く見せることこそ戦争を誘発するのだということを認識した。また、容易に降伏することは同盟諸国への裏切り行為であることも認識した。かつて第1次世界大戦でドイツに対して毅然として立ち向かったベルギーの姿は精神的に素晴らしいだけでなく、政治的にも正しい。
この本からは、平和とは現状の境界線維持であるということも学んだ。主義主張、誇大な構想、ロマン主義によって戦争は誘発される。居心地が悪くとも、現状の維持のために外交および軍事的な努力を続けることが重要であると感じた。

 19世紀以降の戦史に詳しい別宮氏による軍事・戦争に関するQ&A集である。通常の大学の一般教養に国際政治学や戦争学がほとんど無いため、我々は世界諸国に比べて非常にこの分野への理解が乏しい。この本では、様々な疑問に歴史的事実を持って回答してくれる良書である。
「宣戦布告なしの開戦は合法?」
  →「はい。宣戦布告とは国内及び中立国向けが主眼だからです。」
「クラウゼビッツの“戦争は他の手段をもってする政治の延長である”は本当ですか」
  →「近代的参謀本部の設立以降、外交と関係しない戦争が発生したため、現代ではNOです。」
「民間人が軍隊に対抗できる?」
  →「独裁者に率いられた軍に対しては不可能です。1万人集まっても、小銃で武装した200人に蹴散らされます」
「軍人は好戦的か?」
  →「絶対に勝てる保証が無い限り、将軍というものは非常に臆病です」
「戦争になりやすい国は?」
  →「隣国同士です」
といった具合で、その内容には唸らされるばかり。
 止めの一発は、「ハト派のフリをして口先で平和を唱え、隣国と友好第一を唱える人物が、じつは平和にもっとも危険なのです。」
 どっかの国にもいますね。

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