ぷらり日本全国「語源遺産」の旅 (中公新書ラクレ) の感想

現地を旅して、言葉が生まれた舞台や背景を紹介した本。ある言葉が誕生した土地、流行するきっかけになった土地、そこには、単なる雑学としての「語源」を超える出会いや発見があると述べている。読売新聞夕刊に連載された「語源ハンター」を加筆して新書化している。

べっぴん、やぶ医者、十八番（おはこ）、トロ、タニマチ、春一番、折紙付き、太鼓判、金に糸目を付けない、ぎょっとする、ろれつが回らない、銀ぶら、感謝感激、うんたらかんたら、濡れ衣、しっぺ返し、完璧、の１７の語源を解説している。

土地土地で出会う言葉の物語を知って、時には、人生を振り返ったり、日々の生活を見直すきっかけになったりする。心温まる希望や驚きに満ちあふれた話もあれば、涙にむせぶ悲劇の話もある。気が付くと、日本を再発見する旅をしていると述べているように、まさに語源に出会う旅は、日本が好きになる旅という感じがする。

著者は、日本語への「好奇心」を授けてくれた亡き母に感謝している。ことあるごとに「まず辞書をひきなさい。自分で調べなさい」と躾けてくれたという。

実際に現地に出向き、地元の人たちとの交流の中で、しかも、調べられることには貪欲に、語源と向き合った熱意が伝たわってくる本だと思う。