武士の絵日記 幕末の暮らしと住まいの風景 (角川ソフィア文庫) の感想

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参照データ

タイトル武士の絵日記 幕末の暮らしと住まいの風景 (角川ソフィア文庫)
発売日2014-11-21
製作者大岡 敏昭
販売元KADOKAWA/角川学芸出版
JANコード9784044092177
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

数年前にでた「幕末下級武士の絵日記」の修正、加筆版。

江戸末期、武州忍(おし)藩に実在した尾崎石城(せきじょう)。もとは百石取りの中級武士だが、藩政を批判したためわずか十人扶持に落とされ蟄居の身に。

しかし、この絵日記に書(描)かれた石城の暮らしはとても楽しそう。妹夫婦の家に居候しながら、頼まれれば絵を描き、書を読み、酒を飲み、歌を吟じるという、それはまあ太平楽な日々。幕末動乱の響きが聞こえてきても、日記の主は友人宅や寺(当時は社交場も兼ねていたよう)で日々遊行三昧。当時の刑罰はけっこういい加減だったようで、蟄居閉戸でも来客はあるし、本人だって人目につかなければ外出可能だったようです。

しかも、この日記によれば、上級武士も下級武士も女将も坊主も商人も、分け隔てなく飲み食い、そして踊るのです。江戸開闢から二百年以上経った実際の封建社会では、もろもろの縛りがだいぶ緩やかになっていたことがわかります。

その緩さは温かさでもあったようです。藩から咎めをうけた石城を、周囲の人々は優しく包み込んで励まし、慰めます。宴会や遊行の風景を描いた彼の絵には、飄逸な筆致の中に皆への細やかな愛情が感じられます。

建築学者である筆者は、当時の中下級の侍屋敷を図面入りで説明しており、視覚的にも江戸の武家社会をわかりやすく浮かび上がらせることに成功しました。厳密な身分社会を描く多くの時代小説を読んできた人には、目の洗われる1冊です。

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