カラヤン幻論 の感想

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参照データ

タイトルカラヤン幻論
発売日販売日未定
製作者裄野 條
販売元アルファベータ
JANコード9784871985826
カテゴリエンターテイメント » 音楽 » クラシック » 演奏家・指揮者・楽器

購入者の感想

音楽評論としてかつて読んだことのあるどれとも異なり、驚くほどユニークな視点での分析で、
カラヤン好きの私にとって最高に楽しい時間を過ごさせていただいた。

カラヤンほど毀誉褒貶の激しい芸術家は少ない。音楽評論家でも、
故吉田秀和氏や黒田恭一氏などはカラヤンの美点(と欠点)を公正に評価していたが、
反面誰とは言わぬが、まるで汚物か何かみたいな扱いをしてはばからなかった向きも多かった。
彼らアンチ・カラヤン派は、しかし本当にカラヤンの音楽を虚心に聴いていたのだろうかと、
私はいぶかっている。『権力の亡者だ』『守銭奴だ』『愛する○○を圧迫した憎っくき仇』...
そんな反感が心に壁を築き、ただそしるために聴いたのではないだろうか。

著者裄野氏はカラヤンがお好きに違いない。この評論はカラヤンの多数の録音を主な材料に、
マエストロの心中を忖度してみた考察であると言えるだろう。
中心となるのはもちろん録音された音楽そのものである。
そこから裄野氏は、まず短年月の間に再録音が行われた理由を考察する。
例えばモーツァルトとチャイコフスキーの後期交響曲集を、
カラヤンは70年代初めにEMIに録音し、数年も経たぬうちにDGにも録音している。
なぜそんな短い間に再録したのか? セールス上有効だからか? 
そうではなく、二つの録音は意図が違うのだと裄野氏は考える。
前者ではライブのような白熱感を、後者では最新の録音技術による精緻な再現記録を
目指したものだと考えるのだ。さらに裄野氏の分析対象は、多くの曲の録音日程や実演日程、
インタビュー記事、さらに起用したオーケストラやソリスト、はてはカラヤンが意図した
(少なくとも容認した)はずのジャケットデザインにまで敷衍していく。

著者裄野氏は医師だそうだ。なるほど、と私は納得した。
医師は診断にあたって、限られた情報、時に錯綜し、また互いに矛盾しかねない情報から、
患者に何が起きていたら、この状況が最も矛盾無く説明できるかを考える。

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