ミュージック 「現代音楽」をつくった作曲家たち の感想

※サンプル画像 クリックで拡大します

本書は2013年に刊行されたハンス・ウルリッヒ・オブリスト著『ア・ブリーフ・ヒストリー・オブ・ニュー・ミュージック』、邦訳版では一新して『ミュージック~ 「現代音楽」をつくった作曲家たち』という本旨から汲み取った副題付きのタイトルになっています。二十世紀後半の現代音楽の前衛やフロンティアに興味のある方全てを対象にした本書の帯をビョークが担当していますが、彼女のサウンドクラウドでのDJセットを知る音楽ファンにはこれ以上の適任は考えられないように思われます。いわゆる専門性の高い学術的な研究書になりますので、その内容の方向性から誰彼に無条件ですすめられる書物ではないのですが、それでも本書に登場するカールハインツ・シュトックハウゼン、エリオット・カーター、ピエール・ブーレーズ、ヤニス・クセナキス &フランソワーズ・クセナキス、ロバート・アシュリー、フランソワ・ベイル、ポーリン・オリヴェロス、ピーター・ジノヴィエフ、テリー・ライリー、トニー・コンラッド、スティーブ・ライヒ、オノ ・ヨーコ、フィル・ニブロック、ブライアン・イーノ、アート・リンゼイ、クラフトワーク、カエターノ・ヴェローゾという集録の並びに惹かれた方にはぜひ手にとっていただきたいです。
彼らのような広く世に認知されている音楽の個性派アーティストの営為には一般人には思いもよらない発想や思想的な難解さが伴いますが、著者のセンスの良い現代音楽観ならびに芸術全般への理解力や洞察力もあってそれ自体が大変に貴重です。とりわけ番外編的な存在に思われるかも知れないピーター・ジノヴィエフを掲載したことは著者のオブリストの慧眼によるもので本書の意義を感じます。ピーターは電子音楽のパイオニアで1969年にロンドンにエレクトロニック・ミュージック・スタジオを共同で設立、世界で初めてコンピューターを自宅に所有した人物としても知られています。