女性画家たちの戦争 (平凡社新書) の感想

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参照データ

タイトル女性画家たちの戦争 (平凡社新書)
発売日販売日未定
製作者吉良 智子
販売元平凡社
JANコード9784582857801
カテゴリアート・建築・デザイン » 芸術一般 » 美術史 » 東洋・日本美術史

購入者の感想

本書は、第二次大戦下の女性画家史という、新書としてはたいへん珍しいテーマの本である。また、本書は冒頭から最後まで、高いエネルギーで読者(女性男性問わず)を魅了する優れた本である。また、本書はフェミニズム(偏見あればご容赦)視点からの、男性視点(我々)に対する厳しい批判を含有する本である。本書はまた、70年前の戦争を批判し、同じ道をたどらないように読者に警告しながらも、(それまで男性中心主義に抑圧されてきた)戦前女性画家たちの最高の自己実現となった「大東亜戦皇国婦女皆働之図」(1944年)について熱く語り、その魅力を読者に焼き付けてしまうという、いささかの矛盾(?)を含有する本である。
概略
カラー口絵(8枚)・・大東亜戦皇国婦女皆働之図の全体図2枚、部分拡大図2枚、女性画家戦争画(前線画)4点。いずれもきれいなカラー復刻である。
はじめに(2頁)・・本書に視点にかかわる二つの重要な提示がある。一つは祖母が戦争画を「なつかしい」と言ったこと、もう一つは「女性画家」の過去の呼び方である「閨秀」「女流」には、男性の視点が強く反映されているという主張である。
第一章.(約41頁)・・大正末期から昭和初期まで
●戦前には様々な女性画家団体が成立し、女性画家の活動を支えたが、その特徴は「出自の均質性」にあった。すなわち、女性作家には、労働者階級出身の著名な作家(林芙美子等)もいたが、女性画家は中流階級出身者(親にそれなりの財力あり)がほとんどであった。
●プロレタリア美術運動に参加した女性画家もいたが、日本共産党幹部等の指導者層は、その男性中心主義(女性嫌悪と階級運動優先主義)により、女性が女性だけの大衆団体を組織することに反対したため、プロレタリア婦人雑誌であっても、編集等に男性が多く参加しており、表紙絵に女性画家の絵が使われることは少なかった。モダニズムもまた、男性優位主義を内包しており、女性は前衛美術にも関わりにくい環境であった。
●1930年代、女流画家の活躍で、社会的関心も高まったが、そこで期待されたのは「女性らしさ」(作品の女性らしさ以上に、作家の容貌、雰囲気等が問題とされる)であった。
第二章(約85頁)・・日中戦争開戦後ら終戦まで。本書の中心部分。

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