マルクスは生きている (平凡社新書 461) の感想

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参照データ

タイトルマルクスは生きている (平凡社新書 461)
発売日販売日未定
製作者不破 哲三
販売元平凡社
JANコード9784582854619
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » イデオロギー

購入者の感想

「マルクスは生きている」というタイトルに、いわずと知れた共産党の元委員長であった著者。この組み合わせは、人によっては心の底で「今さら…」などと抵抗感を抱くかもしれない。自分は、手をつけなければいけないと思いつつ、その難易度からまだ踏ん切りがつかない「資本論」が解説してあるということで手に取ったのだが、そのポイントを掴んだ解説はもちろん、「弁証法的唯物論」を基礎にした物理学の解説にまで範囲を広げた、期待以上に知的刺激がつまった書に仕上がっており、高い満足感を得ることができた。

第一章は、「唯物論の思想家・マルクス」として、理学部物理学科出身の著者(というのは意外だった)が、唯物論を下敷きに、DNAや素粒子などの発見の解説と共に、2008年日本人ノーベル物理学賞による成果まで論じており、近年の物理学の発展が解説してある。特にエンゲルスは、自然科学にも精通していたことには予想外であった。第二章「資本主義の病理学者・マルクス」第三章「未来社会の開拓者・マルクス」として、資本論の解説や同時にそれを知的武器に現代社会における「格差」と資本主義経済の「搾取」といった病理の分析、もちろん2008年末からの世界経済危機の発生の原因もわかりやすく論じられている。何より補論や語彙の解説が時々に付随されており、マルクスやエンゲルスによる様々な研究成果や日記や手紙の公開といった私的な歴史的背景を同時に追えるので理解が深まりやすい。「社会主義への道」といった未来予想図は、人により感想が異なるであろうが、その理論と展開方法は「食わず嫌い」になる前にまず一目すべきであろう。

また多くの人が考えているであろう「崩壊したソ連はどうなんだ!!」という疑問にも誠実に向き合い著している。これについては一般に広まっている「誤解」を解いているというほうが正しいかもしれない。著者は最後に、「マルクスを、マルクス自身の歴史のなかで読む」を自身の合言葉にしていると述べている。「21世紀世界の混迷を、いま、マルクスに聞く」という帯の文と共に、本書でその役割を果たせたのか、その判断は読者にゆだねられる。

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