恩の形而上学 の感想

執行草舟氏が「魂の燃焼へ」という本の中でこの「恩の形而上学」について触れているのを見て、手にとって読んでみた次第です。
内容は哲学であるがために相当に難しく、部分的理解でさえもおぼつかないまま読み終えたというのが正直な感想です。
ただ、執行草舟氏が言うように読書は「わからなくていい」ものだと構えて読めば、わからないなりにも自分の力量に応じてそれなりの感動を得られると思います。

・空間的、時間的に無限なこの宇宙の中で自己の存在が限定されているということは、その限定されたなかでの「行為」によって、われわれは無限なる宇宙の絶対的生命に連なり、宇宙的生命の創成にさえ自己が参画する機縁がある。
・その第一歩として、宇宙の中で限定されている自己の立場を、不完全なわれわれ人間なりの方法で「自覚」することこそが最重要問題である。
・その「自覚」の具体的な顕れ方としては、時間的空間的な自己の相対的把握の基盤として、「国家」を枢軸に据えなければならない。
・国家を自己の相対的把握の枢軸として、民族的自覚を自己の生命の自覚とすれば、所謂「天人合一」の可能性にさえ与ることができるのがわれわれ人間に与えられた最大の恩恵である。

大体、以上のような内容が緻密な哲学的叙述によって示されているのではないか、と捉えました。（上は個人的理解であって、本書の抜粋ではありません）

民族の神話（われわれ日本人にとっては記・紀に示されている歴史）を、自己の歴史観とする方が実人生にとって有意義なのではないか・・・という予感を持ちつつ、現代の学校教育で習うような宇宙観と歴史観に馴らされている僕らにとっては、この宇宙観の変革は思想の飛躍を必要とするものであります。
それでもその懸崖を飛び越えたい！という人にとっては、この「恩の形而上学」こそその第一歩たる最良の学となるのではないかと思います。