袁世凱――現代中国の出発 (岩波新書) の感想

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参照データ

タイトル袁世凱――現代中国の出発 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者岡本 隆司
販売元岩波書店
JANコード9784004315315
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

袁世凱なんて知らない、そもそも、読めない(アイセガイと呼んだ人を知っている)知っていても、辛亥革命のあとで孫文から権力を奪って、皇帝になろうとして失敗して憤死した権力亡者といったところの袁世凱を、実にビビッドに描きだした本書はホント傑作だ。

本書のボリュームは、つとに文字の大きくなった岩波新書で200頁に満たない。それで、中国近代史にドンと存在感のある袁世凱を描くというのは、並大抵の労苦ではない。そのため、著者自らが最後に認める通り、見事なまでに大胆に色々なイベントを語らない。日清戦争は一行、孫文とのかかわりもあっさりしすぎ。

しかし、それはマイナスではない。袁世凱という巨大な森に入り込まず(=細かいエピソードや歴史の背景を言わない)、彼を遠目に俯瞰することで、彼すら大樹だが森の中の樹の一つとした本当に大きな世界史の中の中国を描き出しているからだ。また、高校レベルの世界史では無味乾燥な漢字の名前と出来ごとの羅列だった中国近代史が実に生き生きと腹におさまる書きぶりも秀逸だ。(本書を知識なく読む方は、逆に山川世界史の中国近代史を読んでおくと、非常に分かりやすいだろう。)

終生グランドデザインをもつことなく、しかし天才的な軍人としての天賦と瞬発的な権力抗争での強さによって、局面局面では成功してきたという袁世凱像は、日本で言えば、山県有朋や桂太郎あるいは田中儀一といった長州閥で陸軍をバックに権勢を極めた者たちを彷彿とさせるが、そのスケールははるかに大きい。
決して褒められた人でもないし、嫌悪感が先立つ。しかしだからといって、梟雄の一言で済ませてはいけない、キチンと検証しなくてはいけない。著者の狙いが見事に結実し、それと同時に広い層の読者に知識と新たな見方を与える。短い新書だからこその成果と高く評価したい。

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岩波書店から発売された岡本 隆司の袁世凱――現代中国の出発 (岩波新書)(JAN:9784004315315)の感想と評価
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