地球科学の開拓者たち――幕末から東日本大震災まで (岩波現代全書) の感想
参照データ
タイトル | 地球科学の開拓者たち――幕末から東日本大震災まで (岩波現代全書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 諏訪 兼位 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784000291538 |
カテゴリ | ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 地球科学・エコロジー » 地球科学 |
購入者の感想
諏訪先生は名古屋大学の岩石学の教授だった先生だが,視野が広く,興味の及ぶ範囲が広い.また様々な文献も読まれて,着実に歴史の流れを追跡する能力にたけておられる方だ.この先生が満を持して発表された好著,と言ってよいだろう.幕末の榎本武揚から始まって,外人教師のナウマン・ライマン・ユーイング・ミルン,と地質調査の初期と地震観測の初期の状況が記される.それからは小藤文次郎にはじまって,我が国の地質・地物・地球化学のそうそうたるメンバーが,合計24名登場し,それぞれの業績の歴史的意味付けがなされてゆく.時折文末には短歌が挟まれ,登場人物は写真ではなく,諏訪先生による似顔絵が掲げられているのもほほえましい.学問以外では,短歌とスケッチを良くされた先生の面目躍如の書である.現代まで辿った先は,これからの課題が浮かび上がり,専門家は勿論,一般市民の方にも警鐘を鳴らしている.近年,地学分野に好著も多いが,専門外の方が読まれても,十分に地球科学の歴史が追える書となると,なかなかお目にかかれない.そんな中にあって,燦然と光を放っている書,と言っても過言ではないであろう.