歴史とは何か (岩波新書) の感想

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参照データ

タイトル歴史とは何か (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者E.H. カー
販売元岩波書店
JANコード9784004130017
カテゴリ » ジャンル別 » 歴史・地理 » 歴史学

購入者の感想

今から30年以上前。大学1回生の春に、担当教授から「これを熟読しなさい」と指定されて読んだ。その後、就職1年目にも読んだ。最近、もう一度読んだ。
色あせない。

書名は「歴史とは何か」ですが、歴史を語る者には「歴史家としての姿勢」を、歴史をつむぐ我々一般人には「歴史の見方考え方」を教えてくれます。
詳細のレビューはたくさんの方が書いていますから省きますが、カーの結論は「第一章」だけでもよく読むとわかります。
各章にも主張を言い表したキーフレーズが随所に出てきますので、ここにいくつか挙げておきます。

P40
「『歴史とは何か』に対する私の最初のお答えを申し上げることにいたしましょう。歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話なのであります。」

P159
「過去の記録が保存されるのは、未来の世代のためであります。」

P184
「歴史とは過去の諸事件と次第に現れて来る未来の諸目的との間の対話」

P197
「本当の意味の歴史というものは、歴史そのものにおける方向感覚を見出し、これを信じている人々にだけ書けるものなのです。私たちがどこから来たのかという信仰は、私たちがどこへ行くのかという信仰と離れ難く結ばれております。未来へ向かって進歩するという能力に自信を失った社会は、やがて、過去におけるみずからの進歩にも無関心になってしまうでしょう。」

言葉を選び、含蓄があるため、一読だけではその言わんとすることがなかなか腑に落ちませんが、難しいことを言っているわけではありません。
多くの人に読み継がれている名著です。

確証バイアスのかかった歴史観を得意げに開陳する歴史家の方には、是非「もう一度」熟読して欲しいと思います。

 大学では西洋史を専攻した私。史学科の課題図書の筆頭はこのE.H.カー『歴史とは何か』だった。そしてカーの決めゼリフは「歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話である。」(p. 40)
 でもこれだけでは、カーの真意は伝わらないように思うので、私の言葉でカーの代弁をしてみたいと思う。
 一般的には、歴史的な事実というと、考古学や日本史の遺跡発掘のイメージで「客観的事実」を宝探しの宝を探すように「発見」し、それを記述したら歴史が出来上がり、という感じがするのだが、そうではない、とカーは言いたいのである。そして「主観的」という言葉が何か悪いものであるかのように考えられがちだが、そうではなく、歴史家の「判断」があって初めて「歴史的な事実」として認められるのだということである。そうすると主観的な判断が入るので「客観的事実はない」「不変の真理はない」と嘆いたり、怒ったり、ぐれたり、すねたりしてしまう人がなぜがいる。それが学問的態度ではない、って言うことなのだ。私たちができることは、限りなく近づこうという態度で臨むことだけだ。そしてあくまでも仮説として設定することに意味があるのである。「客観的事実」を設定すること、「不変の真理」を設定すること、それに意義がある。有るかどうかは問題ではない。(愛も神様もそういう存在だと私は思っています。)
 画家の安野光雅は数学者で水道方式で有名な教育家でもある遠山啓と対談し、以下のように語っている。「主観」という言葉のひびきが悪いものであるかのような誤解をとくこと。これが科学教育の第一歩だと思います。

●安野:ひとつの目的に到達するための一種の方向感覚のようなものはありますか。(中略)

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