Number 特別増刊「桜の凱歌」エディー・ジャパンW杯戦記 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー)) の感想

「日本はこのW杯にラグビーの世界でリスペクトを得るために来た｡大会が終わったときに､世界中のラグビー･ファンから､日本はリスペクトに値するチームだと思われるようにしたい」｡
これは､南アフリカとの初戦を２日後に控えたエディ･ジョーンズがプレスに語った言葉だと言う｡

感動冷めやらぬ中緊急刊行された「ナンバー」特別増刊号は､エディ･ジョーンズの南アフリカ戦への先発メンバーを発表する会見での意味深いコメントの数々の紹介から始まる｡そして､正にエディの言動通り､エディ･ジャパンは驚きと称賛を以て世界にその名を刻ませる事になった｡

返す返すも､今年のラグビー･ワールドカップの日本代表の戦いぶりは素晴らしかった｡
大学時代からラグビーを観戦するのは好きでファン歴だけは長いものの、論じるほどには詳しくない者からしても大きく心揺さぶられたし､改めて､ラグビーというスポーツが持つ魅力を実感させられた｡
本号は､日本中のスポーツファンに感動を与えたワールドカップ１次リーグでの戦いぶりを詳細に分析するだけではなく､日本ラグビー躍進の立役者たるエディ･ジョーンズ､リーチ･マイケル､五郎丸歩のロング･インタビューに加え､堀江翔太や田中史朗に､あの奇跡の逆転トライを決めたカーン･ヘスケスらジャパンの戦士たちに､彼らをサポートしたマルク･ダルマンや岩渕健輔ら裏方たちへの取材も押さえたタイムリーな１作｡
南アフリカ戦での奇跡の勝利から１ヶ月､この間様々なメディアがジャパンとエディについて称賛しているのを目や耳にしてきたが､初めて語られる秘話や思いも多く､改めて感動が甦ってくる｡
(あの南アフリカ戦での終了間際でのペナルティ・キックではなくスクラムを選択した心境についても、エディ、リーチ共に詳しく語っている）

中でもやはり印象深いのはエディ･ジョーンズの緻密で思慮深い戦法と心理戦で､誰もが奇跡と呼んだあの一戦とグループリーグ３勝が決してフロックではなく､確かな裏付けによる成果であった事が分かる｡
地獄のような過酷なトレーニングの中で選手たちの心を掌握する力､社会において人を動かす者たちにとって大きな参考になるのではないだろうか｡