チャップリンの影 ~日本人秘書 高野虎市~ の感想

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参照データ

タイトルチャップリンの影 ~日本人秘書 高野虎市~
発売日販売日未定
製作者大野 裕之
販売元講談社
JANコード9784063397598
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » アート・エンターテイメント » 映画

購入者の感想

 チャップリンの運転手から始めて私設秘書にまで上りつめた日本人がいた。
 今では一部のチャップリン映画ファンにしか顧みられることもないこの史実を丹念に追った評伝です。

 ハリウッド進出後のチャップリンになぜ日本人の秘書がついたのか。そこには高野虎市(こうのとらいち)という男の波乱に富んだ日系人移民史があったことがよくわかります。
 親が決めた許嫁(いいなづけ)との結婚を嫌ってアメリカへ渡り、パイロットになる野心を抱くも、惚れた女の猛反対にあって空への夢を断念。人づてに紹介された新進気鋭の若き喜劇役者との出会いが彼の人生を変えることになるというのです。他人との縁を断ち切ろうとした先に待ち受けていた新たな出会い。そんな奇遇な縁(えにし)のあざなえる様を興味深く読みました。

 チャップリンとの公私にわたる高野の生活は18年に及びましたが、『モダン・タイムス』の女優ポーレット・ゴダードの嫉妬がきかっけで職を辞することになります。これまた人との関係を結ぶことの難しさと不思議さに思いが至る出来事です。

 本書の後半は、チャップリンのもとを去った高野が、日系人としてアメリカの恣意に翻弄されていく様を哀しく描き出していきます。太平洋戦争下に時の政府が進めた愚行政策によってチャップリンの秘書だった男は敵性外国人として疎まれていくのです。

 それにしても強く印象に残ったのは、1930年代という、今日に比べれば人種的差異についてまだまだ偏見と無知に満ちていた時代にあって、チャップリンがアジア人の高野を差別することなく絶大な信頼を寄せていたという驚きの事実です。チャップリンのヒューマニストとしての態度は映画の内側だけではなく外側にも厳然と存在していた。そのことに心が熱くなります。

 高野ゆかりの人々を国の内外に訪ね、膨大な資料に丁寧にあたって本書を編み上げた著者の精力的な取材のあとが見られる良書といえます。

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講談社から発売された大野 裕之のチャップリンの影 ~日本人秘書 高野虎市~(JAN:9784063397598)の感想と評価
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