ユーロ消滅?――ドイツ化するヨーロッパへの警告 の感想
参照データ
タイトル | ユーロ消滅?――ドイツ化するヨーロッパへの警告 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ウルリッヒ・ベック |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784000254182 |
カテゴリ | ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 各国経済事情 » ヨーロッパ |
購入者の感想
ウルリッヒ・ベックの本を手にとるのは初めてだが、エコノミスト諸氏にも示唆的なメッセージが含まれている。しかし、本書については大いに気になる点がある。それは、本文中の注がベック自身の注ではなく、翻訳者が創作した訳注だという点である。訳注の一例をあげると、「・・・つまり非知が拡大するというのがベックのリスク社会論である。詳しくは、島村賢一「現代社会分析におけるリスク社会論の可能性と問題点ーベックの世界リスク社会論を中心に」を参照」(p.13)などと、翻訳者自身の論文を特記している。他方で、原著者注そのものはすべて巻末に押し込まれている。常識的には、逆でなくてはならない。巻末に「訳者解説」を置くことは、その内容について原著者の同意がある限り許されるであろうが、原著者注を差し置いて本文中に訳者創作の注書をすることは、僭越であり、読者に対し非礼である(読者は、翻訳者・島村氏の見解を知りたくて本書を手にしたわけではない)。しかも、こうした編集方針を採ったことについて一言の説明も見当たらない。翻訳者である島村氏(世田谷区生涯大学専任講師)が社会学アカデミズムにおいてどの程度の評価を受けた研究者なのかは知らないが、岩波書店がこうした変則を認めたこと自体がまことに不可解である。読後にある種の不快感が残る1冊であった。