女文士 (集英社文庫) の感想

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タイトル女文士 (集英社文庫)
発売日2015-09-18
製作者林 真理子
販売元集英社
JANコード9784087453621
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » 歴史・時代小説

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太宰治(津島修治)が眞杉静枝と初めて会う場面でふともらす言葉である。この前年、太宰は心中事件をおこし自分だけ生き残ったのだ。何故太宰は「君とは一緒に死ねない」と言ったのだろうか。
その女、眞杉静枝という「噂の女」の生きざまを描く傑作評伝である。

静枝の元秘書だった堀内洋子が、晩年ヒロポンと病で痩せこけ、ほお骨がとびだした貧相な女になりはてた静枝の若き日の美貌の写真を見せられた時、さらに静枝の通夜の席で宇野千代から静枝のことを書きなさいと強く言われた時、洋子は万年筆をとり眞杉静枝という、傲慢で自信過剰で男を渡り歩いたといわれた噂の女流作家の半生を書きはじめる。

静枝は本土で生まれたが、父親の都合で当時日本の植民地であった台湾に移り住む。
強引な見合いによる結婚。満たされない外地での生活。内地へ戻れば自由であり、自分の望みもかなえられるはず、と家族も夫もすべてを捨てる。

しかし本土に帰っても大正時代の日本では働く女は一段低くみられ、特に静枝が資格を持っていた看護婦という職業は<きちんとした家の娘が就くものではないとさえ思われていた。>

文章で身を立てたい静枝は新聞の子供欄に文章を書くようになり、それが認められて大阪毎日新聞社に職を得る。
小説家になりたい静枝は職権で取材を理由に当時の大御所、武者小路実篤、志賀直哉に直接会うことになる。

ここから静枝の日常生活の中に、きら星の如き文壇のスターたちが次々に登場するのは圧巻である。武者小路との愛人生活。中村地平との恋愛生活。しかし結末は男が逃げ出して終わってしまう。

遂に結婚という最も望んでいた相手をみつける。しかし作家中山義秀との結婚生活も戦争末期、敗戦という時代の中で食うものもない地獄のような生活に追い込まれる。

スキャンダラスに書きたてられ、「噂」を流された裏から静枝の深い孤独、その裏返しの家族というものへの強い思いが見えてくる。
成功していく同時代の女流作家たちへの嘲笑ともいえる憐憫。反対に武者小路の生活を世間一般の家族生活とみる憧憬。最後には夫よりも自分の血が流れる家族をとるが、離日、渡欧という現実逃避。

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