ミドリさんとカラクリ屋敷 の感想

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参照データ

タイトルミドリさんとカラクリ屋敷
発売日販売日未定
製作者鈴木 遥
販売元集英社
JANコード9784087814774
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

家から電信柱が突き出ていても、たいていの人は「変なの」と思うだけで、すぐ忘れてしまうだろう。でも、著者は忘れなかった。高校時代に見かけて、その後大学院にまで進むのだけれど、忘れられなかった。なぜ家から電信柱が突き出ているのかという、個人的な疑問から出発したのに、何と明治時代の北海道開拓にまでさかのぼってしまう。といっても、歴史上の人物というわけではないから、ちゃんとした史料があるわけではない。ほとんどが伝聞だ。でも、それがとても面白い。

正直言えば、何の役にも立たない話ではある。著者の興味だけで書かれた本で社会的な問題にアプローチしたなんてこともない。そのため、なぜ著者が感動しているのかわからないこともしばしばである。しかし、歴史に名を残すような人物ではなくても、その人なりに山あり谷ありの人生を送っているわけで、そこまで追求したことがこの本を上質のノンフィクションに仕上げている。NHKの「タイムスクープハンター」のような感じと言えばわかってもらえるだろうか。

なお、ミドリさん夫妻は、カラクリ屋敷のほかにも鎌倉に家を買ったとあるが、その資金はどこからでたのだろうか。寮の管理人でそれほどの給料がもらえるとは思えず、最後まで疑問だった。

毎日歩いている通勤や通学時の風景ほど、きちんと認識できていないものはないだろう。たまにちょっとした変化におっと思うことがあったとしても、何日かするとすぐにまたその変化も日常へと変わっていく。

しかし、本書に登場する日常の風景は、すこしばかり格が違う。湘南の閑静な住宅街の中にあるその家は、屋根のど真ん中からコンクリート製の電信柱が天に向かって突き出ているという。おまけに、青い瓦屋根に黄色い扇模様の糖飾り、クリーム色とこげ茶色を貴重とした木の欄干、全て模様の違う窓の鉄柵。住んでいる住人は大正二年生まれの木村ミドリさん。以下、婆さんと呼ぶことにする。

◆本書の目次
プロローグ すべては電信柱からはじまった
第一章   ミドリさんと坂の上の職人屋敷
第二章   原風景への回転扉 ルーツを追う旅 北海道篇
第三章   勇敢な女横綱、厨房に立つ
第四章   森の中の事業団
第五章   電信柱の突き出た家と六尺の大男
第六章   田んぼの蜃気楼 ルーツを追う旅 新潟篇
第七章   ミドリさんと電柱屋敷の住人たち
第八章   からくり部屋の秘密

著者は、高校生の時に偶然この家のそばを通りかかり、その佇まいに衝撃を受ける。思い余った著者は、二年越しで勇気を振り絞り、ついにこの家のチャイムを鳴らす。そして、ここに住んでいる婆さんが、やはり只者ではなかた。建築にやたら詳しくて、家の隅々まで何もかもを知り尽くしている。すっかり婆さんに魅せられた著者は、婆さんのルーツを辿る旅にまで出るはめとなる。

本書は、著者にとっては、高校生の時から追いかけてきた乾坤一擲のテーマであろう。そのせいか、すこし肩に力が入り過ぎているような印象も受ける。しかし、その力み具合が、ひらりひらりとかわしていく婆さんの言動とのコントラストを成して、より一層婆さんの魅力を引き立てている。

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