国宝「源氏物語絵巻」を読む の感想

2011.9.5〜9.25　東京芸大美術館での国宝展示と「―東京芸術大学　現状模写―　国宝源氏物語絵巻に挑む」を見る機会がありました。展示では模写の美しさもさることながら、料紙の美しさや詞書の字配りに目を奪われました。国宝および現状模写を間近に見て実感したのは、源氏物語絵巻は、源氏物語の全文に挿絵をつけたものではないということ、源氏物語の文章から抜き出され編集された本文による詞書と、ひとつの場面を静止画として描いた絵を組み合わせた源氏物語とは別の作品であるということでした。
その源氏物語絵巻を読む面白みをこの一冊が伝えています。
本書は、詞書は木版（川面本）ながら残存する絵巻全体の美しさを間近に伝え、国宝源氏物語絵巻の全貌を詞書を丁寧に読み解いて鑑賞できる本です。むしろ、国宝では詞書まで掲載した入門書を作ることはきわめて難しいそうで、この木版本（川面本）のおかげで、この内容ではちょっと信じ難いリーズナブルな値段です。