長田弘全詩集 の感想

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参照データ

タイトル長田弘全詩集
発売日販売日未定
製作者長田 弘
販売元みすず書房
JANコード9784622079132
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 詩集

購入者の感想

 長田弘が亡くなった。『全詩集』は長田が自分自身で目を通した最後の詩集になるのだろう。「結び」に、

 詩集十八冊、詩篇四七一篇を一冊に収める『長田弘全詩集』を編んで気づいたことは、時代を異にし、それぞれまったくちがって見えるそれぞれの詩集が、見えない根茎でたがいにつながり、むすばれ、のびて、こうして一つの生き方の物語としての、全詩集という結実に至ったのだという感慨でした。

 と書いている。「一つの生き方としての物語」に長田の詩への思いがこめられている。長田は「生き方」をたしかめるために詩を書いた。詩を書くことで「生き方」をととのえたのだと思う。ととのえるために、ゆっくり、着実に、ことばを選び抜く。
 そういう「ことば」の歩き方、歩かせ方がとてもよくあらわれた詩が、「花を持って、会いにゆく」。長い作品だが、全行引用する。

春の日に、あなたに会いにゆく。
あなたは、なくなった人である。
どこにもいない人である。

どこにもいない人に会いにゆく。
きれいな水と、
きれいな花を、手に持って。

どこにもいない?
違うと、なくなった人は言う。
どこにもいないのではない。

どこにもゆかないのだ。
いつも、ここにいる。
歩くことは、しなくなった。

歩くことをやめて、
はじめて知ったことがある。
歩くことは、ここではないどこかへ、

遠いどこかへ、遠くへ、遠くへ、
どんどんゆくことだと、そう思っていた。
そうではないということに気づいたのは、

死んでからだった。もう、
どこへもゆかないし、
どんな遠くへゆくこともない。

そう知ったときに、
じぶんの、いま、いる、
ここが、じぶんのゆきついた、

いちばん遠い場所であることに気づいた。
この世からいちばん遠い場所が、
ほんとうは、この世に、

いちばん近い場所だということに。

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