ことばと思考 (岩波新書) の感想
参照データ
タイトル | ことばと思考 (岩波新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 今井 むつみ |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784004312789 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 人文・思想 » 心理学 |
購入者の感想
今井むつみ氏は、言語発達の基礎研究において高い評価を受けている気鋭の学者であると同時に、「人が学ぶということ」という著書において認知学習論を展開し、教育分野にも深く関心を寄せている。本著は、従来の新書の使命であった、先端研究についての良質な概説書であることは言うまでもないが、なぜ言語学者が教育に強い思いを寄せるのかを明らかにしているという点で非常に興味深い。
ヒトという種を特徴づける行為が、言語を介しての学びであり、その本質は、言語によって表現された結果としての「知識」ではなく、「認識」を決定づけるところにある。本著は、ヒトの学びにおいて「認識」する力がなぜ大事なのか、改めて考え直すきっかけを与えてくれる。学力低下論争に端を発して、相変わらず知識の積み上げこそ教育だという不毛かつ不幸な動きが生じている。しかし、「認識」する力を育てずして、知識を身につけさせようとしても、結局、断片化され、使えず、やがて消えてしまう。そのことへの批判がゆとり教育という流れを生んだのではなかろうか……
言語があるから、know, realize, recognize, perceive, construe, appreciate が可能になる。著者の述べる通り、これらの英単語はすべて「認識」と訳すことができ、ここに学びの要素、教育すべき要素がすべてつまっている。認識した結果を言語化した「知識」を覚えることだけが学びではない。それはほんの一部であり、言語を媒介としたヒトの学びの本質は、いかに「認識する」かというところにあるということを本著を読むと納得できる。教育に携わる方、教育に関心のある方にも一読をおすすめする一冊である。
ヒトという種を特徴づける行為が、言語を介しての学びであり、その本質は、言語によって表現された結果としての「知識」ではなく、「認識」を決定づけるところにある。本著は、ヒトの学びにおいて「認識」する力がなぜ大事なのか、改めて考え直すきっかけを与えてくれる。学力低下論争に端を発して、相変わらず知識の積み上げこそ教育だという不毛かつ不幸な動きが生じている。しかし、「認識」する力を育てずして、知識を身につけさせようとしても、結局、断片化され、使えず、やがて消えてしまう。そのことへの批判がゆとり教育という流れを生んだのではなかろうか……
言語があるから、know, realize, recognize, perceive, construe, appreciate が可能になる。著者の述べる通り、これらの英単語はすべて「認識」と訳すことができ、ここに学びの要素、教育すべき要素がすべてつまっている。認識した結果を言語化した「知識」を覚えることだけが学びではない。それはほんの一部であり、言語を媒介としたヒトの学びの本質は、いかに「認識する」かというところにあるということを本著を読むと納得できる。教育に携わる方、教育に関心のある方にも一読をおすすめする一冊である。