百年続く企業の条件 老舗は変化を恐れない (朝日新書) の感想

「１００年に一度の不況って言うけどね、銀行や大企業がバタバタと倒産して、子供の身売りなどが出た昭和はじめの世界恐慌や、すべてを焼き尽くす戦争なんかに比べたら、今はずっとマシですよ」（カネダ株式会社：金田勝次名誉会長、９５歳）。

１００年以上の歴史を持つ日本の老舗企業のデータ分析と個別取材を行った結果をまとめたもの。帝国データバンクの資料館・産業調査部が編集しているだけあって、類書に比べて様々なデータが豊富で、多角的な方向からの傾向分析が試みられているのが特徴である。

比較的とっつきやすい、アンケート結果の紹介を踏まえた社是・社訓の紹介から始まる。次いで、老舗企業の定義や業種別・地域別などの分析。さらに、１２社の老舗企業の紹介。その後は、財務分析、老舗の倒産例の分析、老舗の変化についての章が続く。

必ずしも老舗企業の良い面ばかりを飾り立てて書かれているわけではない。特に、「老舗の財務を分析する」の章では、老舗企業だからといって本業では一般企業に比べて特に儲かっているとはいえないことや、負債も平均程度にはあること、土地活用などの営業外収益に頼る傾向が一般企業より強いことが読み取れる。また、「老舗が倒れるとき」の章では、変わり続ける時代の波の中で生き残り続けることの厳しさや、次世代への事業継承の難しさにも触れている。

「伝統は守るものではなく、日々新たに作り出すものだ」。

巻末についている「老舗の創業年表」というのも、関が原の合戦といった日本史の主な出来事と併記されていて、さりげなく興味深かった。